カンボジア選挙への中国介入に危機感

 7月のカンボジア選挙の中国サイバー部隊の介入の可能性について、フィナンシャルタイムズや日経新聞などが報じていたことを思い出せば、ペンス演説の選挙介入への危機はもっともだと思うだろう。

 報道によれば、カンボジアの親中派フン・セン政権を勝たせるために、そのライバル政党党首の娘にスパイウィルスを仕込んだメールが送りつけられた。そのウイルスを指揮するサーバーを割り出すと、中国海南省であり、攻撃ソフトの書き込み言語の一部も中国語。海南省が解放軍サイバー部隊の一つの拠点であることは知られており、中国が関与していると思われている。カンボジアの選挙委員会や諸官庁、野党政治家へのアクセス履歴が盗み出されたという。カンボジア選挙は中国が干渉するまでもなく与党の圧倒的勝利が決まっていたが、カンボジアをサイバー技術による選挙干渉の練習につかっていた、と見られている。

 この報道のときは、台湾やASEAN諸国の選挙、あるいは日本の沖縄県知事選挙がターゲットではないか、と取りざたされた。7月に台湾民進党のサイトがハッキングされ、また台湾総統・蔡英文が仏教・道教に対する締め付け強化の政策をとるといった偽情報がSNS上で流され、その情報を信じた寺院による抗議活動が台北で起きた事件もあったので、11月の台湾の統一地方選および2020年の総統選が本丸ではないか、ともいわれた。

 だが、トランプやペンスが指摘するように今中国が最も介入したい選挙は、米大統領選であろう。トランプ政権と妥協点を見出すことが絶望的であれば、政権が変わるまで耐え忍ぶしかない。だが中国の経済体力は周囲が思う以上にきわどい所にきており、最悪6年の時間を耐えきれるかというと自信はなかろう。

 ただ、中国が世論工作や選挙介入によってトランプ政権を交代させたとしても、果たして米中関係が元のさやに戻れるか、という点は疑問をもつ人は多い。米中新冷戦はトランプが開戦ののろしを上げたとはいえ、国際政治の大きな流れのなかで避けられる動きではなかった。次の大統領選で民主党政権が誕生しても、この流れが変わることはないかもしれない。

 とすると習近平政権に待ち受けているのはかなり絶望的な状況だ。日本を含む周辺国としては、追いつめられた習政権の暴走を含めてあらゆる衝撃に備える必要がありそうだ。

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