社会主義を放棄できるか

 何頻などは、今の方向性のままでは難しいと見ている。最大の原因は経済政策の失敗である。鄧小平路線を逆走する共産党による経済コントロールの強化では、中国経済は回復できない。そのつけは、中産階級だけでなく低所得層にもいくのだ。

 また、エリート、中産階級、知識人たちを弾圧してきた習近平に対するイメージは相当ネガティブで、知識層、中産階級層が主流のインターネットユーザーの間では習近平の評判は低い。農村、労働者などは、習近平の反腐敗キャンペーンや核心キャンペーンに洗脳される人も多そうだが、若者に関していえば、今や出稼ぎ労働者もスマホでSNSのやり取りに参加する時代であり、実はそんなに簡単にプロパガンダに乗せられるほど“情弱”でもないのだ。

 なので、習近平が大統領になることを望むのであれば、その路線は毛沢東回帰ではなく、改革開放であり、自由化であり、特に政治改革、司法の独立や法治の徹底に踏み込まなければならない。

 次の5年で、習近平にそれができるかどうか。それができれば、毛沢東も鄧小平も胡耀邦も趙紫陽も得られなかったチャンスを習近平はつかむことになる、というわけである。

 中国が党大会でざわついている間に、日本でも総選挙を迎える。昨日まで護憲を主張して安保法制に体を張って反対していた人が選挙に勝つためなら改憲派に変わるのを情けない、という人もいるだろうが、有権者の求めるように国や社会を変えていくのが政治家の務めなら、有権者に合わせて信念やイデオロギーが変わるのも、また民主主義の特性ともいえる。

 というわけで、習近平にも、ぜひ日本の政治家のような、身軽な信条変更、路線変更を見習ってほしいところだ。民主主義という名の大衆迎合主義のほうが、実はイデオロギーよりも、長期独裁政権確立への近道であるかもしれないのだから。

 トランプと習近平のしくじり合戦が始まり世界は大混乱へ…。秋に党大会を控えた中国が国内外に対してどう動くか。なぜ中国人はトランプを応援していたのか。軍制改革の背景とその結果は? 北朝鮮の暴発と米中の対立、東南アジアへの進出の可能性など、様々な懸念材料が散らばっている、かの国を徹底分析する。
ビジネス社 2017年6月9日刊

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