軍部、企業系、四大直轄市も

 重慶市以外に資格剥奪が目立ったのは軍部だ。中央軍事委員会後勤保証部政治委員の張書国、国防科技大学前政治委員の王建偉、武装警察副政治委員の張瑞浄らの名前が名簿から消えている。いずれも中将だ。

 ほかに資格が取り消されたのは、中央規律検査委員会駐財政部規律検査組の元組長であった莫建成、公安部政治部主任で江沢民と関係が深いといわれた夏崇源、中国聯通(チャイナ・ユニコム)董事長の王暁初。ともに今年6月に党大会代表に早々に選抜されていたはずだった。莫は8月下旬、重大な規律違反容疑で失脚。夏もどうやら“不測の事態”に遭遇した、と伝えられている。王暁初の代表資格取り消しの原因は不明ながら、江沢民派の利権企業であった中国聯通はいわゆる国有企業改革で、いろいろ揉めており、その責任を問われた可能性がある。企業系の資格取り消しは他にも、河鋼集団董事長の于勇、山東威高集団董事長の陳学利がいる。

 さらに吉林省政治協商会議主席の黄燕明、黒竜江省委統一戦線部副部長の林寛海。このあたりは習近平の嫌う北朝鮮利権閥のからみもあるかもしれない。他に安徽省馬鞍市委書記の魏尭、甘粛省甘南州長の趙凌雲。

 このほか、天津市、北京市、上海市も多くの市委常務委員が代表落ちしており、四大直轄市が若干格下げになった印象だ。以上、香港紙明報や香港新興メディアの香港01がまとめていたので参考にした。

 いったん選出された党代表が、党大会直前に代表資格を取り消されるという異様な状況を言い訳するように、新華社はじめ中央メディアが、「党代表はどのように選抜されたのか」というテーマの記事を一斉に発信した。そこで強調されているのが、党代表は“厳格に党規約と中央の代表選挙工作の要求に従い”段階的な選挙による方法で選出された、ということだ。つまり、選挙というシステムで、民主的に選ばれたのだ、ということを強調している。

 ちなみに党代表選出の選挙システムとは、まず組織の上層部が候補者をリストアップし、組織での考察を経て、代表候補名簿を確定したのち予備選挙を行い、会議選挙を行うという五段階を経て代表が選出される。しかも、その投票は信任・不信任を投票するのであって、複数の候補者から選抜するものでもないので、まったくもって民主的な選挙とは別物だ。しかしながら、重慶市は重慶市で、軍部は軍部で、そうやって組織として選んだ代表を送り込んでくるという意味においては、それなりの党内民主というものがあった。今回の党代表選挙は、そうした共産党の従来の党内民主というものを無視し、習近平の仕掛けた権力闘争に相当かき回されたようにみえる。

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