
中国でアフリカ豚コレラ(ASF)が猛威を振るっている。原因は貿易戦争の影響で米国産豚肉の輸入を停止した代わりに急増したロシア・東欧産豚肉の輸入、密輸が疑われている。中国側も必死で対策を講じているようだが、死亡豚の処理や情報公開の不透明さ、中国との人やモノの往来の多さを考えると日本はじめ周辺国への影響も軽視することはできない。韓国では、中国産加工豚肉からウイルス遺伝子が検出されている。米中貿易戦争の予想を超えた悪影響が広がりつつある。
ASFは20世紀初頭にケニアで報告された豚の感染症。もともとアフリカサハラ砂漠以南やイタリアのサルジニア諸島に常在しているウイルス。経口、経鼻、ダニなどを媒介して感染が広がる。人には感染しないが、豚から豚へ感染し、ワクチンも治療法も目下ないので、感染を食い止めるには、感染が見つかった豚および感染が疑われる豚の徹底処分しかない。これが2018年夏以降、中国で爆発的に広がった。
アフリカとイタリアの一部に限定して存在していたASFウイルスは2007年ジョージアを経由してロシアに伝播。2017年3月、ロシア東部のイルクーツクでは大流行していた。2017年暮れの段階でロシア、東欧、アフリカを中心に11カ国に感染地域は広がっていた。そして2018年8月3日までに、中国遼寧省瀋陽市で中国初のASF感染の確認が公表された。これはアジアで最初の感染例でもある。その時点で感染数は913頭。すぐさま殺処分と無害化処理が行われ、感染はコントロールされたと当局は発表していた。だが、実はそうではなかった。
8月下旬までに、感染地域は遼寧省瀋陽、河南省鄭州、江蘇省連雲港、浙江省温州に広がった。北京を含む東北、華北、華東地域がASF汚染重点監察地域に指定された。9月上旬までにはさらに安徽省、黒竜江省、内モンゴルに広がり4万頭以上の豚が感染拡大防止を理由に殺処分された。中国当局は依然、ASFの感染状況は既に有効に処理されている、と公式に発表しているが、党内部ではわずか一カ月あまりの間に7カ省に広がったその感染拡大のスピードに動揺が広がっているらしい。
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