9・11事件以降の世界の変化として、中国の中華民族の復興、中東のイスラム原理主義の台頭、アフリカ・ラテンアメリカの資源ナショナリズムの台頭がある。いずれも行き過ぎたグローバリズムの逆流としてのナショナリズムの台頭といえるが、西側の普遍的価値観は中華民族の復興とイスラム原理主義の台頭については批判で一致し、アフリカ・ラテンアメリカの資源ナショナリズムは同情と支持を表明している。

 一方、中国はこの資源ナショナリズムと普遍的価値観とは対立の姿勢を示している。中国のナショナリズム、つまり中華民族の復興を実現するには、資源の対外依存度が今以上に高くなっていくということであり、アフリカの資源ナショナリズムと対立する形にならざるをえない。投資と占有開発でアフリカの資源を奪う従来のやり方を変更することは難しい。

 アフリカ諸国の政府自身は、今のところ中国との外交と援助姿勢を重視しており、中国にかなりの気の使いようだが、まがりなりにも選挙で大統領を選ぶ国家では、最終的には民意がものをいう。中国のやり方を新植民地主義と感じて抵抗感をもつ知識人や市民は増えていくだろうし、中国がやり方を変えないかぎり、対アフリカ投資はますます前途多難に陥るという見立てはだいたい間違いないのだ。

「善意の日本」が中国への有効打に

 この事実を中国側は十分に認識しているのだが、発言上は、中国は「西側のライバル企業が中国脅威論や新植民地主義を喧伝して、中国企業の邪魔をしている」と言う。中国にすれば、かつてアフリカをさんざん食い物にした欧米諸国には言われたくない、という思いもあるだろう。

 だがアフリカに植民地を持ったこともない「善意の日本」が、アフリカの資源ナショナリズムを尊重しつつ、きめ細かい開発や投資に乗り出せば、額は少なくとも、これは確かに現地市民の対中感情を相対的にさらに悪化させることになるだろう。中国にしてみれば脅威を感じて当然だ。経済リターンを得るという点では、かなり難しいが、日本の目的は中国への牽制であり、国連におけるアフリカ諸国の支持を得ることだとすれば、それは多少なりとも効果があるはずである。少なくとも、中国がここまで警戒心をむき出すということは、日本のこの一手に効果があるとみているということである。

 アフリカは中国の一帯一路(陸のシルクロードと海のシルクロードの外交・経済一体化構想)戦略の海のシルクロードの終着点という意味で、中華秩序圏拡大(中華民族の復興)戦略の鍵となる土地。日本はこの中国の思惑に対し、インド洋から太平洋にかけて海洋安全保障にアフリカを組み込むことで中国を牽制、南シナ海からインド洋にかけての開放性を守りたい。それは尖閣諸島を含む東シナ海を中国の覇権から守ることにもつながる。

 日本にしては珍しく、明確な戦略と視野をもった外交ではないか。困難はあろうが、うまくいくことを願っている。

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