国際社会も注目する労働争議が起こった中国・深圳市

 5月から深圳で続いていた深圳佳士科技公司(JASIC)の労働争議で、8月24日に支援者の学生ら50人が一斉に身柄拘束された。中国の工場において労働争議自体は珍しくないが、この労働争議の目的が賃上げや待遇改善にとどまらず、共産党に支配されない労働者による自主的労働組合を設立するという政治的要求が中心になっていること、大学生、大卒生らや共産党左派の知識層が運動の推進力となっていることなどから、国際社会も注目していた。だが8月に入り、労働争議の支援者リーダーであった活動家の沈夢雨が当局に連れ去られたことをきっかけに、運動が完全に弾圧されかけている。

 大学の有志や香港の人権組織、党の左派人士らが中心になって沈夢雨の釈放を求め、香港では労働組合の設立を求めるデモなどを行っているほか、日本を含めた海外メディアも取材に動いているが、当局側は、この労働争議を「外国の非政府組織による煽動」と決めつけ、徹底弾圧する方針のようだ。日本では“深圳スゴイ”の見出しでAIやIT企業の現場としての活気あふれる様子で取り上げられることの多い深圳。なぜ、この地で突如、労働者の政治的要求運動が広がっているのか、それがどこに行きつくのかを考えてみたい。

 現場となったJASICは2005年に設立した溶接機の開発・製造企業。深圳、重慶、成都などに工場を持ち、深圳工場の労働者は約1000人。賃金未払いや厳しい罰金制度、保険や住宅基金の削減、トイレにまで監視カメラをつけるプライバシー侵害といった奴隷のような劣悪な雇用条件であるという。2015年以降、この状況はますます悪化していく。一つは、同年ごろから本格化した習近平政権の労働者権利運動を含む「維権」(権利維持運動)の抑え込み政策だ。この年の7月に起きた大量の弁護士・人権活動家拘束はそうした習近平政権の弾圧政策の一つといえる。広東省で育っていた労働者の権利運動NPOのリーダーたちもこの年、冤罪容疑で次々と拘束されていた。

 もう一つは、「新常態」宣言という建前で認められた経済停滞だ。AIやIT分野で活気あふれる深圳の姿ばかりがクローズアップされるが、深圳だけでなく多くのほとんどの工場の利益は激減し、そのしわ寄せは労働者にきている。香港の労働者権利擁護NGO・中国労工通訊によれば2017年8月から2018年8月の一年の間に1860回のストライキおよび労働者デモが発生。2015年から2017年の二年間の統計では、6694回の労働者集団抗議活動が発生している。そうした労働者抗議運動の8割は未払い賃金の支払いや賃金アップといった賃金に関する要求であった。