そういうタイミングで日本の読売新聞(8月24日付)が特ダネとして、「中国次期指導部リスト判明、王岐山の名前なし」と報じたので、一部外国メディアも驚いて転電した。読売新聞は複数の関係筋の話として、北戴河会議で作成された次期指導部リストには定年通りに引退するかあるいは残留するかが注目されていた王岐山の名前はなく、習近平、李克強、汪洋、胡春華、韓正、栗戦書、陳敏爾の七人の名前があった、と報じた。いくつかの海外メディア関係者は、この情報について、「薄熙来失脚を最初に報じたのも日本メディア(産経新聞)だったから、日本の報道は無視できない」と注目している。

どこの筋から流れたのか

 このリストが信頼できるかどうかは別として、いったいどこの筋から流れた話かは興味深い。習近平は、総書記三期目を実現するために、王岐山という誰もがその優秀さを認めるスーパー実務家を、定年を超えて留任させ、定年制度を打破する先例にしようとしている、というのが一般的な見方だ。これは王岐山が習近平と盟友関係、あるいは政治的に同盟関係にあるという前提がある。これが共青団筋や上海閥筋から流れてきた情報ならば、共青団派は習近平との人事駆け引きに勝利して、実力不足の陳敏爾を政治局常務委員会に入れることを認めるかわりに有能な王岐山を引退させ、定年制の壁を崩そうとする習近平の目論見を防いだ、というふうな解釈になる。

 一方、親習近平筋から出てきた話なら、共青団エースの胡春華の対抗馬になりうる陳敏爾を政治局常務委員会入りさせた習近平派の勝利人事だ、という見方になる。陳敏爾が宣伝イデオロギー担当として指導部(政治局常務委員会)入りするというのは、これは従来のルールではありえなかった。陳敏爾のように地方行政トップ経験が三年にも満たない者が、政治局委員も経ず、いきなり政治局常務委員会入りが許されたとするならば、政治局常務委員会の権威が相対的に軽くなる。それを強引に習近平ができたというならば、すでに習近平の独裁基盤は固められつつある、ということになるやもしれない。そして、二度の金融危機を乗り越え、反腐敗キャンペーンでも次々と大物政治家を倒していった実務能力の高い王岐山に対しては、コンプレックスの強い習近平は実は疎んでいた、という説に信憑性が出てくるわけである。

 読売新聞は記事中で、リストが固まったものではなく、人事駆け引きの途中経過にすぎないということわりを入れている。が、その数日後に、毎日新聞は陳敏爾の政治局常務委員会入りは「固まった」と断定的に報じた。他のメディア関係者も、確定で打つ、打たないは別にして、陳敏爾については「ほぼ内定」との見方を示すところが多い。話はそれるが、陳敏爾は胡海峰(胡錦涛の息子)が浙江省清華大学長江デルタ研究院党支部書記に就任するとき、かなり便宜を図ったので、胡錦涛は恩義を感じているらしい。陳敏爾が実力に見合わないまま貴州省書記に昇進できたのは、貴州省に依然影響力を持つ胡錦涛の後押しもあったから、とか。とすると、王岐山の進退はともかく、胡春華と陳敏爾ふたりともを政治局常務委員会に入れるのであれば、共青団派にとってはぎりぎり譲歩可能ということになる。