「習近平独裁」への道は広がったのか(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 このコラムでも注目してきた今年の北戴河会議(河北省のリゾート地・北戴河で行われる共産党幹部・長老の秘密会議、秋の党大会の根回しが行われる)がどうやら8月16日までには終わっていたようである。政治局常務委員の一人、張徳江(全人代常務委員長)が湖南に全人代執法検査のために訪れた様子を、16日夜のCCTVテレビが報じていたからだ。17日には習近平もメディアで動静を報じられるようになった。北戴河会議はいつ始まって終わったと広報されることはないので、政治局常務委メンバーの動静が報じられなくなった段階で始まったな、と判断し、その動静が再び報じられて、あ、終わったな、と気づく、そういうものである。そうすると8月3日ごろから15日ごろまで開かれたのだろうと判断できる。

 ただ、この北戴河会議で、人事における激しい攻防があったとか、そういう話は今のところ、流れてこない。むしろ習近平の思惑どおりの人事が進んだ、習近平の勝利で終わった、という分析の方が香港メディアを中心に多くでているのではないか。5月ごろまでは、北戴河会議では壮絶な権力闘争、駆け引き、特に反習近平派の反撃が展開されると思われていた。だが蓋をあけてみれば、異様なほど静かな北戴河会議であったようだ。

長老たちの静かな夏休み

 北戴河会議直前に、孫政才を完全失脚させるなどの荒技で、長老らアンチ習近平派が会議での反撃の意欲を失ったということなのだろうか。8月18日付けのサウスチャイナ・モーニングポストのように、例年のような秋の党大会の水面下交渉といった意義のある北戴河会議自体が今年は開かれなかったのだ、と報じる香港メディアもあった。つまり、長老たちの影響力自体がすでになく、彼らの北戴河入りは、単なる“夏休み”に過ぎなかった、というわけだ。

 サウスチャイナ・モーニングポストは習近平寄りの政商・馬雲率いるアリババが資本を握るメディアなので、これは習近平サイドのプロパガンダの可能性もあるが実際、江沢民は連続三年、北戴河会議を欠席しており、兪正声、孫春蘭、劉延東ら現役政治局員を含む幹部がこの時期、内モンゴルに視察に行って北戴河会議には出席していなかった。

 江沢民派、上海閥には特に若手の後継もなく、習近平の対上海閥との権力闘争という点では、習近平に軍配が上がる形でほぼ決着がついているので、兪声正らが会議をさぼるのはわかるのだが、孫春蘭や劉延東ら共青団派の重鎮たちが会議に参加しなかったら、孫政才が失脚後、ほぼ唯一の希望の星といっていい共青団ホープの胡春華の政治局常務委員会入りは危ないのではないか。しかも、胡春華自身もどうやら北戴河会議に参加していない。また同じく政治局常務委員入りの可能性があるといわれている汪洋(副首相)も、韓正(上海市書記)も、北戴河会議の期間、海外に行ったり、地元の視察に行ったりしていた。つまり出席していない。