WSJがウイグル弾圧報道を強化

 亡命ウイグル組織から断続的にこうした強制収容所の実態については情報が出ていたが、最近になってウォールストリートジャーナル(WSJ)がこの問題の報道に力をいれている。WSJ社説(8月13日付)で中国のウイグル弾圧への強い警告を発信。在米ウイグル問題研究者のアドリアン・ツェンツ氏の発言を引用する形で、この2年間に北西部の少数民族ムスリムが数十万単位で強制収容所送りにされている可能性を指摘。著名なウイグル族の民族学者で新疆大学教授のラハイル・ダウットが昨年12月以降、北京で姿を消したことなどにも触れ、中国のウイグル弾圧は国際社会が関心を寄せるべき重大な人権問題としている。

 さらにWSJは強制収容所付近の現地取材や米国の衛星写真などを根拠とした秀逸なリポート(8月17日付)を発表している。カシュガルに近い疏勒県付近の衛星写真の2017年4月17日と2018年8月15日撮影の2枚を比較すれば、そこに建てられている強制収容所建設面積が2倍以上に拡大していることが一目瞭然だ。この収容所はWSJ記者が昨年11月にも現地を訪れている。その時にはまだなかった建物も8月15日には建てられており、この収容所の拡張が現在進行形で急速に行われていることを示している。

 この記事では、米国と国連の専門家の推計として、新疆地域のムスリム少数民族人口の7%にあたる100万人が収容されているとしている。かつて強制収容所に収容されていた22歳のウイグル青年はWSJのインタビューに答えて「収容所の中国人職員から、この世に宗教なんてものはない、神なんて存在しないのに、どうしてお前は信仰するんだ?と問われた」と証言している。WSJはその他、収容者の家族ら数十人に接触しているが、うち5人が収容所内で家族が死亡した、あるいは釈放後まもなく死亡したと答えているという。

 在外ウイグル亡命組織もこうした一連の動きに呼応している。米国の公聴会にあわせて7月26日、世界ウイグル会議代表のドルクン・エイサ及び前代表のラビア・カーディル、さらにオーストラリア、カナダ、日本、米国などのウイグル亡命組織代表者らが米ワシントンに集まり、ウイグル弾圧の実態について米議会と米メディアに発信した。

日本外国特派員協会で2015年に会見する世界ウイグル会議前代表のラビア・カーディル(写真:AFP/アフロ)

 このときの在米亡命ウイグル人の証言によれば、習近平の子飼いの部下である陳全国が現新疆ウイグル自治区の書記になって以降、対ウイグル強制収容所再教育政策が強化され、収容所では毛沢東語録の暗唱や、毛沢東による新疆解放への感謝を唱えるよう強要する、時代錯誤な“再教育”が行われているという。さらにウイグルに対しては豚肉を食べるように強要し、ウイグル女性には漢族男性と結婚せねば、就職もできない、と洗脳しているという。こうした洗脳、再教育を受け入れない場合、せいぜい3人が入ればいっぱいになる程度の反省房に監禁される。この部屋に9~10人が詰め込まれることもあるという。

 反省房では睡眠時間は4時間だけ、豚肉以外の食事を与えられず、一日中、毛沢東への感謝を唱えさせられるという。オーストラリアから来た亡命ウイグル人の証言によれば、陳全国が書記になって以降、在外ウイグルの家族への弾圧が激しくなっており、家族の偽の呼びかけによって、海外に留学していたウイグル学生が新疆に呼び戻されたあと収容所に入れられるという例が急増しているという。その数は8000人以上ではないか、とも言われている。マルコ・ルビオ上院議員は4月に、新疆ウイグル自治区書記の陳全国に対しては在米資産の凍結や入国ビザを制限するなど「人権の包括的責任に関するマグニツキー法」を適用するべきだと米政府に要請しており、米政府としても、その方向で検討中のもようだ。