中国が尖閣奪取シナリオをどこまで考えているか、について一つヒントになることがある。8月5日の香港フェニックステレビの国際情報番組で、今回の事件についてキャスターが「中国の戦略の方向性としてはどうしたらよいですかね」との質問に対して、復旦大学歴史学教授・馮偉がこう答えていた。

「恐れていること」を直視し、自ら備えよ

 「特に強調したいことはですね、2013年5月の日本産経新聞が報じたことです。つまり、中国が釣魚島の実行支配を奪取するならば、おそらく武装民兵と解放軍が漁民に成りすまして釣魚島12カイリ内に入ったあと、軍事行動を取るだろう、と。日本が一番恐れていることは、漁民が本物の漁民でないことなんですね。この情報が鍵だと私は思います。中国の取るべき行動は、日本が最も恐れていることをすればいいんです…」

 このシナリオが実行されたとき、日本はどのように対応するか、準備はできているだろうか。

 日本ではタカ派女性議員の稲田朋美が防衛相になったことで賛否両論の声が出ている。問題視する側は、この人事が中国や韓国を刺激し、日本の安全保障を危うくすると危惧しているのだろう。また、8月15日に現役防衛相として靖国神社に参拝するかどうか、そして参拝したことで、尖閣海域に集結する漁船や中国海警船のさらなる挑発行動を引き起こすのではないかと気にする人もいるだろう。だが、中国の尖閣周辺におけるアクションは、別に稲田をターゲットにしたものでもないだろうし、日本の防衛相がタカ派であろうがハト派であろうが、そのシナリオが変更されるものではない。

 それよりも、必要なのは、この危機的状況に際して、防衛の最前線と官邸と国民が危機感を共有し、法律上に不備があれば素早くこれを是正し、情報の風通しと信頼を再構築して、来る危機シナリオを想定して、実力を増強し、どう乗り越えるかを考えることだろう。多くの人は忘れがちだが、もともとの領海が3カイリだったのは大砲の射程距離が3カイリだったことに由来する。主権は軍事力によって担保されるという基本を忘れて平和を語ることはできない。

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