南アフリカで開催されたBRICS首脳会議に出席する習近平(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 習近平政権は7月下旬、今年になって初めての外遊に出た。行先はアラブ首長国連邦、セネガル、ルワンダ、南アフリカ、モーリシャス。自らが大戦略として掲げる一帯一路(シルクロード経済圏戦略)についてアラブおよび、アフリカ諸国から協力と支持を取り付けることが主な目的だろう。だが、この10日におよぶ初外遊に、王滬寧も劉鶴も随行していない。この二人は、習近平が政策ブレーンとしても最も信頼を寄せているといわれていた。また習近平の片腕として、「米中貿易戦争」の交渉の中心に立つと予想されていた王岐山の影も薄い。間もなく河北省の保養地で開催されるとみられる北戴河会議前に、習近平政権のキーマンたちの動静について整理しておこう。

 まず、今回の習近平のアラブ・アフリカ歴訪について簡単に報告しよう。19日から29日まで10日間におよぶ外遊では、9月に北京で開催予定の中国・アフリカ協力フォーラムの成功に向けた地ならしを行い、とくに中国の“植民地化戦略”として国際社会で警戒心を呼び始めている「一帯一路」戦略について、アフリカ諸国の賛同をしっかりと取り付けることが大目的だ。このために習近平は外遊出発前に、アラブ首長国連邦に200億ドルの借款、将来5年にわたって8兆ドル以上の輸入、7500億ドルの投資を約束。またシリア、イエメン、ヨルダン、レバノンに対しても6億人民元の支援、10億元のプロジェクト実施を公言している。

 また南アフリカとは147億ドルの投資に合意。ルワンダに対しては1.26億ドルの借款で、道路を2本作ることを約束。セネガルとは西アフリカとして初めて「一帯一路」協力文書に調印した。セネガルに対しては2017年だけで1億ドル以上をかけて、首都と第二都市を結ぶ高速道路や工業団地建設を支援した。また、南アのヨハネスブルグで開催されたBRICS首脳会議で、反保護貿易主義の結束を呼びかけ、米国を牽制する勢力をBRICSからアフリカ諸国、トルコにまで拡大していこうとしている。

 トランプ政権がアフリカにはあまり興味を示していない今のうちに、中国の借款による中国企業の請負でアフリカ諸国の基礎インフラ建設を進め、一帯一路戦略の要衝地として取り込みたい考えだ。中国からの巨額債務を返済できない場合は、こうしたインフラは事実上、中国に接収される可能性が強いが、そのことに危機感を持てるほど、アフリカ諸国の政治は成熟していない。

 この「一帯一路戦略」にとってきわめて重要な外遊に、王滬寧と劉鶴が同行していないことが、いろいろな憶測を呼んだ。「一帯一路戦略」は王滬寧と劉鶴が立案者。「一帯一路」という命名は王滬寧が考え出したものといわれている。また、王滬寧は習近平が各国指導者との会談における受け答えの振り付けも行う習近平のブレーンとして知られており、重要な外遊に同行することが多かった。