さらに7月21日に、獣爺というペンネームで「ワクチンの王」というタイトルのコラムがネット上に発表されて話題となっている。この内容は、2001年以降からひそやかに進められていた国有企業改革で民営化した長生生物の成長の軌跡の背後に、3人の「ワクチンの王」と呼ぶべき、タダならぬ能力の株主が存在することを示唆している。一人は長生生物の女総経理の高俊芳。長生生物では国有企業時代からのトップで、現長春市人民代表で吉林省の政協委員だ。2003年に青息吐息の経営に陥っていた長生生物の株を安値で買い占めて、自身も大株主の一人となった。

 もう一人は韓剛君という元河南省開封市の区レベルの衛生防疫ステーションの職員、3人目は杜偉民という元江西省衛生防疫ステーションの職員。二人は90年代の下海ブームにのって公務員からビジネスマンに転身、経緯は不明だが2001年に長生生物の株主に加わり、いつの間にか高俊芳と3人で長生生物を私物化、やがて中国の巨大ワクチン市場を牛耳るようになっていた、という。韓剛君と杜偉民は2007年に狂犬病ワクチン製造の老舗企業の常州延申の株90%を買収し江蘇延申に改組。翌2008年は杜偉民が肝炎ワクチン製造大手の深圳康泰生物製品有限公司と北京民海生物科技有限公司を買収。この結果、3人で、肝炎ワクチン、インフルエンザワクチン、狂犬病ワクチン市場の圧倒的シェアを押さえることになった。

3人が関わる企業で問題が次々に発覚

 だがこの3人が関わるワクチン企業は何度も問題が発覚している。たとえば、2009年に狂犬病ワクチン偽造が発覚。しかもすでに人の体内に入っており、回収も保障もできず、300万元の罰金支払いと総経理および社員の逮捕・起訴をうけ、倒産した。しかしながら、江蘇延申の董事長の韓剛君は半年後には山東省で企業再起を申請し、すぐに160万人分のA型インフルエンザワクチンの製造発注を受けたという。そしてインフルエンザワクチン製造大手としての評判を勝ち取った頃合いを見計らって同企業を2億元で売却したとか。杜偉民が買収した中国最大のB型肝炎ワクチン製造業の深圳康泰は2012年から13年の間に立て続けに自主開発ワクチン三種の生産認可がおり、つぎつぎ市場に売り出したが、それはのちに国家食品薬品監督管理局の認可センター副主任が47万元の収賄で失脚したことと関係があるかもしれない。

 2013年12月には、康泰製造のB型肝炎ワクチンを接種した8人の赤ん坊が10日の間に立て続けに死亡する事件が起きた。当局の調査の結果、赤ん坊の死亡は偶発的でワクチンの品質とは無関係との判断が下されたため、杜偉民も康泰も何とか生き延びた。ちなみに康泰サイドはこのコラムに対して、「事実と違うところがたくさんある」との声明を出している。

 ほかにも2016年3月には山東省の薬剤師が、医療卸売企業関係者らから25種類のワクチンを不法に購入し、ネット販売で、コールドチェーンルールを満たさないかたちで中国各地に転売した事件があり、その違法転売ワクチンの中には長生生物製品も含まれていた。

「ワクチンの王」3人が関わる企業で次々に問題が発覚している
「ワクチンの王」3人が関わる企業で次々に問題が発覚している

次ページ 騒動に「政治臭」指摘する声も