王滬寧は政策学者として江沢民、胡錦涛、習近平三代の指導者の政策スローガンや党指導理論、総書記のスピーチなどの起草を行ってきた。今は習近平にべったりで、例えば習近平が先日香港を訪問した際の解放軍香港駐留部隊の閲兵式で、従来の「首長」呼びから「主席」呼びに変更させることを提言したのも王滬寧だといわれている。“習核心”キャンペーンのシナリオを描いているのも彼だ。ただ、政治局常務委入りには必須といわれている地方政府での行政実務経験がないので、もし彼がすぐさま政治局常務委入りすれば、それは明らかに習近平のごり押し人事ということになるだろう。

 栗戦書は習近平より年上なので、習近平の後継にはなり得ない。だが、1955年生まれの王滬寧ならば、2022年の第20回党大会で、一期のみの任期とはいえ後継ポストに就くことは不可能ではない。習近平は任期10年に限らない長期独裁体制を望んでいるようだが、もし、あと5年で鄧小平が作った共産党指導者の任期10年ルールを打破できずに習近平が2022年で引退するのであれば、自分で育てた陳敏爾や蔡奇ら後継者を就けたいだろう。だが、その養成が間に合わない可能性は大きく、そのための“つなぎ”というのであれば、王滬寧は理想的な傀儡になるかもしれない。

官僚の妨害で政界地震は止まず

 このように考えると、この時期での孫政才失脚は習近平の権力闘争の大いなる勝利の一歩ということになる。ただ「習近平が毛沢東のようになるには、党内に妨害勢力がある。一部官僚たちは表向き従順だが裏では背いており、場合によって潰してやろうと企んでいる。それが、中国共産党政界地震が止まない根本原因だ」(謝選俊)というように、権力闘争はこれで終わりではなく、むしろこれからが本番なのだ。

 トランプと習近平のしくじり合戦が始まり世界は大混乱へ…。秋に党大会を控えた中国が国内外に対してどう動くか。なぜ中国人はトランプを応援していたのか。軍制改革の背景とその結果は? 北朝鮮の暴発と米中の対立、東南アジアへの進出の可能性など、様々な懸念材料が散らばっている、かの国を徹底分析する。
ビジネス社 2017年6月9日刊