“之江新軍”のもう一人の期待の星は5月、北京市書記に抜擢された蔡奇である。蔡奇も浙江省で習近平に育てられた腹心で、浙江省副省長からいきなり、習近平の意向で新設された中央国家安全委員会弁公室副主任に抜擢された。しかしながら、この鳴り物入りで作った中央国家安全委員会が実質的な機能をほとんど持たないことは周知の事実。なので、2016年にこのポストからいきなり北京市副書記に抜擢されたことは、完全な“お友達人事”とささやかれた。そのまま北京市市長、書記へと出世していく。これまでの北京市書記という地位の重要性から考えると、信じられないような特進人事であった。しかしながら首都であり北京の書記になれば、自動的に政治局入りは約束される。

政治局常務委員には滬寧推しか

 こういう状況を整理すると、習近平は自分の子飼いの部下を今度の党大会では確実に陳敏爾と蔡奇の二人以上、政治局に入れるであろうし、ひょっとすると彼らを後継者に育てるつもりかもしれない。長期独裁体制確立に失敗すれば、傀儡の指導者を通しての院政を狙うしかない。習近平は目下、政治局にこの二人を含めて9人を自分の派閥から政治局入りさせようとしているといわれている。すなわち、劉鶴(習近平の経済ブレーン)、陳希(組織部副部長)、黄坤明(宣伝部副部長)、丁薛祥(習近平のスピーチライター)、応勇(上海市長)、李強(江蘇省書記)、李鴻忠(天津市書記)あたりだ。このうち、年齢的にポスト習近平として養成可能なのは、陳敏爾、蔡奇、応勇となる。

 では次の党大会で党中央の最高指導部である政治局常務委員会には誰が入り得るのか。人事の決定が見えるであろう北戴河会議までは、まだ時間があり、まったくもって何もわからない。しかし、普通に予想するならば、政治局常務委員枠が現行の7人のままであるとすれば、習近平、李克強が残留したとして、残り5人。当初は、汪洋、李源潮、胡春華、孫政才が共青団派として常務委員入りし、残り一人が、習近平派閥の栗戦書ではないか、と見られていた。

 だが孫政才が外れるとなると、習近平派がもう一人ねじ込まれるかもしれない。候補として考えられるのは趙楽際(中央組織部長)、王滬寧(党中央政策研究室主任)あたりだ。趙楽際は共青団派にも近いので、習近平としては王滬寧を推したいのではないかと思われる。

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