在米中国学者の謝選駿がロイターに対してこうコメントしていた。「習近平は秋の党大会のためにまさに政治ライバルの排除に動いている。今度の党大会では鄧小平時代から続いている最高指導者の任期10年という規定を打ち破って、江沢民の三つの代表、胡錦涛の科学的発展観を飛び越えて、鄧小平理論と毛沢東思想に自分を並べるつもりだろう」と。

 2022年の第20回党大会のとき、これといった後継者候補がなければ、“経験豊富な現職総書記が皆の期待に応えて三期目も継続する、という言い訳が立つ。後継者になり得る優秀な政治家を早めに潰したいのは、そういうわけだ。

胡錦涛の“弟分”胡春華の評価は崩せず

 しかしながら、そうであれば習近平にとってもう一人邪魔な人間がいる。広東省書記の胡春華だ。

 孫政才についていえば、実のところ共青団的にも、一番のエースとしては扱ってこなかった。共青団派への忠誠心や頭脳の優秀さからいえば、胡春華の方が一枚上だ。

 胡春華は湖北省の農村(五峰県)で状元(試験で一番)をとって15歳で北京大学中文系(文学部)に入学を果たすほどの頭脳。しかも、貧困ゆえ北京に行くまでの靴と交通費がなかったため、試験が終わってから一カ月の間、地元工場で労働して靴と交通費を自分で稼いでから入学した、という勤労エピソードもある。

 卒業後は、チベット地域という苛酷な土地での仕事を志願して赴いた生真面目な共青団員であり、長いチベット勤務中に、自治区書記として赴任した胡錦涛との親交を深めた。胡錦涛は清華大学の理系のテクノクラートで、中国の古典にはもともと疎い。国家指導者として最低限必要な古典知識を身に付けることができたのは、高山病で苦しんでいた胡錦涛を親身に世話する胡春華が、夜な夜な語ってくれた古典よもやま話のおかげだとか。胡錦涛と胡春華は上司と部下というよりは、兄弟のような濃密な人間関係、と評する人もいる。

 こういった逸話から想像できるのは、元総書記の胡錦涛が胡春華を習近平・李克強世代の次の指導者としてずっと期待して目をかけていたこと、共青団全体がそのつもりで、彼を支えてきたであろうということだ。胡春華に関しては、明らかに習近平派による権力闘争を仕掛けられたとみられる事件が広東省で何度も起きたが、それをうまくしのいできており、最終的には習近平自身が胡春華の広東省行政の成果を高く評価せざるを得ないほどだった。