米中貿易戦争が勃発した7月6日、株価を見つめる中国・北京の投資家たち(写真:AP/アフロ)

 7月6日、米中貿易戦争が開戦した。中国内外の多くのメディアが「開戦」の文字を使った。つまり、これはもはや貿易摩擦とか不均衡是正といったレベルのものではなく、どちらかが勝って、どちらかが負けるまでの決着をつける「戦争」という認識だ。仕掛けたのは米国であり、中国は本心は望まぬ戦であるが、中国としても米国に対して妥協を見せるわけにはいかない事情があった。この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、どちらかが音を上げるまで長引くであろう、というのが多くのアナリストたちの予測である。

 さて、この戦争でどちらが勝つのか、どちらが負けるのか。あるいは、どういう決着の仕方が日本にとって好ましいのか。それを正しく判断するためには、この米中貿易戦争とは何なのか、その本質を知る必要がある。そして、おそらくはビジネスに軸足を置く人と、安全保障や政治に関心のある人とでは、その判断が違うかもしれない。

 2018年3月22日、米大統領トランプは「中国による不公平な貿易・投資慣行」を抑制するため、通商拡大法232条に基づき鉄鋼、アルミニウムの輸入制限を行う大統領令に署名した。さらに4月3日USTRは、中国による知財権侵害を理由に通商法301条に基づいて中国からの輸入品に追加関税を賦課する品目リスト1300品目(最大600億ドル相当)を公表。これに対し、中国側も、豚肉やワインなどの農産物を中心に128品目の関税引き上げを実施。さらに4月4日に大豆、航空機など500億ドル規模の米国製品に25%の追加関税をかけるとし、全面的な米中貿易戦争の火ぶたが切られる、との予測が流れた。

 だが、このときは2度にわたる米中通商協議を経て関税引き上げ合戦はひとまず保留という棚上げ合意が発表された。理由は比較的わかりやすく、6月12日にシンガポールで行われる米朝首脳会談という重要イベントを控えて、神経を使う交渉を先延ばしにしたかったのだろう。このときの合意で、誰も米中貿易戦争が回避できた、とは考えていない。

 遅かれ早かれ米中の「戦争」はどこかで起きるとの予測はあった。そして米朝首脳会談が終わるや否、米国は、保留にしていた対中貿易戦争を仕掛けた、というわけだ。6月、中国から輸入する1102品目(500億ドル規模)に対する追加関税を決定し、7月6日、米国側は中国輸入品818品目340億ドル分にたいして関税を25%に引き上げた。これに対し、中国も即座に同規模の報復関税を実施。米国はさらに10日、中国からの輸入品2000億ドル規模の関税引き上げリストを発表。中国からの輸入品年間5000億ドルのおよそ半分に追加関税を課す構えとなった。

 中国はこれに対して即座に報復関税をかけるという形にはならなかった。というのも米国からの輸入は1300億ドルほどなので、全部に報復関税をかけても、関税引き上げ合戦には勝てない。その代わり、中国に進出している米国企業に対する不買運動や規制・監視強化といった嫌がらせに出るのではという観測が流れている。また6月、マイクロン、サムソン、SKハイニックスの米韓3社に対してDRAM独禁法違反疑いで調査を開始したのも、報復の一つだろう。