そもそも、肝臓がんにかかったのはまったくの偶然なのか、獄中での食生活や迫害などのストレスとの因果関係がないのか、あるいは、肝臓に悪影響を与えるような薬物投与がなかったのか、そういった疑いも持たれている。なぜなら2015年の709事件(7月9日から始まった中国の人権派弁護士ら300人以上の一斉拘束・逮捕)では、拘束された弁護士たちが、明らかに怪しい薬を無理やり投与されたという証言が出てきているからだ。

 釈放された弁護士たちの証言を総合すると、病気の症状がないのに、高血圧や統合失調症といった診断が下され、無理やり何十錠もの薬を大量に飲まされ、そのあとに意識がもうろうとしてしまったという。薬の過剰投与が肝臓への悪影響を与えることはいわずもがなだ。釈放された弁護士の中には、李和平のように、頭髪が真っ白になって、わずか2年で見る影もないほど面がわりしてしまったり、その弟の李春富のように精神に異常をきたしている者もあり、中国の拘留・投獄中の虐待・拷問のものすごさがうかがえる。このコラムでも何度か繰り返しているが、習近平政権になってからの人権派弁護士や民主活動家への迫害は、文革以来のすさまじさである。

なぜG20で出国治療問題はスルーされたのか

 劉暁波については、中国当局はこうした疑惑を打ち消すのに必死で、劉暁波が獄中で、きちんと健康診断を受けている様子や、20年前からB型肝炎の診断を受けていると認めた様子、監獄の待遇に感謝を示している様子などの出所不明の映像が、インターネット上で流れている。これは中国側にしてみれば、劉暁波に対して獄中で人道的な待遇を行ってきたことの根拠となるわけだが、中国がそういうアリバイ映像を準備していた可能性も当然あるわけだ。

 こうした疑惑がある以上、国際社会は、劉暁波に海外の先進国での出国治療を受けさせ、本当に「謀殺」でないかどうかを、きちんと見極めなければならないはずだ。まずは劉暁波を安全安心な場所に移して、意識のあるうちに真実を証言する機会を設けなければならなかった。だから、中国も出席するG20ハンブルグ・サミットで当然、このテーマも取り上げられると国際人権団体も中国の人権派の人々も期待していたことだろう。

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