こうした権力闘争と結び付けた見方以外に、広東省では多くの人たちが思っている以上に、草の根民主の素地が広がっているのではないかという予測もある。以前、農村の出稼ぎ労働者問題に詳しい中国の研究者に非公式な場で質問したことがある。中国で政治改革、民主化が行われるとすれば、党中央の指導者の英断によって進められる可能性と、草の根民主による底辺からの圧力によって進められる可能性と、どちらが大きいか、と。

底辺からの圧力は高まっている

 その時の彼の答えは、迷いなく底辺からの圧力だ、というものだった。特に、若い世代の出稼ぎ農民、俗に新生代農民工とよばれる若者たちの間に急激に政治権利を求める要求が高まっている、とのことであった。

 中国のメディアコントロールが以前にもまして厳しくなっているため、南部の地方都市の工場地帯などで起こっているストライキ、労働争議の実態はほとんど報道されなくなっているが、昨年暮れから広東省の四つの労働NGO幹部が次々と拘束された背景には、労働争議が、共産党と無関係な労働者自身による労働組合の設立要求など、徐々に政治運動化しつつある実態があったという。

 その学者は、数年後には、農民や労働者の若者の間で、政治権利要求運動が目に見える形で台頭してくるのではないか、という予測を持っていた。

 そう考えると、何かの拍子で、自治を求める抗議運動などに火が付くような状況は、広東省の地方都市、農村では予想以上にくすぶっているのかもしれない。

 そういう視点でみると、烏坎村の乱の再燃は、単なる汚職摘発事件でも一過性の農村集団事件でもなく、もっと長期的な視野で考える必要があるといえそうだ。

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