その翌日の新聞で、地元の地方検察院が林祖恋を汚職・収賄罪で立件したことが発表された。また地元公安当局は、現在、彼を取り調べ中であり、村民全員が捜査に協力するようにと呼びかけたうえ、「不穏分子が、この事件を利用して過激な行動をとらないように。暴力沙汰が起これば、法に基づいて鎮圧する」と警告を発した。

 その警告どおり、村のいたるところに、重装備の警察の暴動鎮圧部隊が配置され厳戒態勢が敷かれた。これに驚いた村民は19日、村長の冤罪を信じて抗議デモを行った。

 このデモは3000人規模に膨らみ、「われらの土地を返せ! 村長を返せ!」と叫びながら、重装備の警官隊と対峙した。この様子はビデオに撮影され、ネットにアップされたものだから、香港、海外メディアも続々と現地入りして取材するようになった。警官隊は記者たちを追い出そうとしたが、村民は記者たちを保護し、取材させた。5年前にこの村が自治を勝ち取ったのと同じ戦略で、村長不在のまま村民の抵抗運動が始まった。デモは連日、繰り返された。村民たちは、訪れる記者たちに口々に「村長は我々が選んだよい村長だ。汚職などするわけがない」と冤罪を主張した。

自白ビデオは孫を人質に強要

 だが、21日に汕尾市政府は、林祖恋の取り調べ中に自分の罪を認めているビデオを公開。

 ビデオの中では警察の尋問に対し、林祖恋自身が「法律知識が浅いために、建設プロジェクトの管理職務にあることを利用して、民生建設プロジェクトの発注の便宜を図るために巨額のキックバックを受け取ってしまいました。この件について検察機関に自首し、素直に処分を待つものです」と述べていた。汕尾市政府の発表によれば、村の学校の運動場工事にかかわる汚職ということだった。だが、この自白は孫を当局に人質に取られて仕方なく行ったものであるということが後に判明した。

 汕尾市政府はこの件について「国内外メディアはこの事件を法に従って客観的公正に取材し報じるように。しかし、蘋果日報(香港紙)、端傳媒(香港ネット総合メディア)など、個別の境外メディアは村内で扇動、画策、指導を行っており、我々は法に基づいて措置をとる」とコメントし、メディアをけん制した。

 村の副書記である張水金は「市政府は、土地問題については処理チームを立ち上げたので、もう村民大会は開く必要ない。この問題に対し村民委員会は何の権力もない」と村民に説明した。

 このことが村民たちの怒りにさらに油を注いだ。林祖恋の自白によって無事釈放された実孫によれば「村民の99%は爺さんを支持している」と祖父を擁護した。汚職容疑についても、“巨額”というだけで具体的な汚職額も出ておらず、また裁判も開かれないうちに、林祖恋の自白ビデオを公開して罪を確定するような印象操作のやり方からも、村民のほとんどは冤罪であると考えているようだった。