かつて趙紫陽の秘書だった鮑彤が最近、面白いことを言っている。十九大の意義とは何か?という質問に対し「目下、十九大の一切を圧倒する中心任務とは、十九大が中国における一切の特殊権利を指導することを維持することだ。このために、目下、十九大が準備されている。十九大が順当に開会すれば、これは一大奇跡であろう。もし順当に開会できなければ、非常の多くのもめごとに見舞われるだろう」という。

 引退したとはいえ党中央の実力者であった鮑彤が十九大の無事開会が一大奇跡だろうと予見する理由は何なのか。彼は他に三つばかりの質問に答えていて、“習近平思想”が党章党規に書き込まれることについては、「自分の名前を党章党規則に書き込むことは、党の伝統であり、疑いのない一種の“造神運動”だ。もし、十九大でこの伝統を放棄することができれば、それは進歩であり、蒙昧との決別であるが、もしこの点を改善することができなければ、“造神”の初心を継続して堅持するということである」と批判的に答え、改革については「改革というのは不満不足があって、ようやく取り掛かれる。しかし、実際は、至るところで現行制度を称賛し、全世界に向けて現行制度をひけらかし、むしろ理想のモデルとして世界に広めて席巻していこうとしている…」としている。

 そして、習近平政権一期目の成果と欠陥は何か、という質問に対しては成果については答えず、「欠陥について言えば、(習近平の父親である習仲勲が提議した)“異なる意見保護法”が未だ実現されていないこと」と答えた。王岐山スキャンダルを暴いた郭文貴を支持する発言もあり、アンチ習近平派である元党中央の知識人・鮑彤が言わんとしていることは、この党内と社会にくすぶる不満が、十九大の開会前にひょっとすると爆発するかもしれない、という懸念ではないか。

暗殺を恐れるあまり、専用機に乗れず

 6月10日夜、上海の繁華街・南京路で久々に1万人を超える抗議集会が開かれ、警察によって強制排除された。表向きの理由は政府による住宅政策への反対だが、あまりに唐突に起きたデモであったので、背後には十九大に向け政局を見越した扇動者がいるのではないか、という見方もある。この手の大規模な“集団事件”は党大会が近づくにつれ、各地で連続的に起きそうな気配がくすぶっている。

 一方で習近平は自らの暗殺を恐れるあまり、新しい専用機“空軍一号”に搭乗できていない、そうだ。香港メディアなどが習近平カザフスタン訪問代表団に近い消息筋からの情報として報じているところによると、「暗殺とテロの心配があるので、新しく導入した空軍一号の正式利用を見合わせている」という。習近平が総書記になって以来、暗殺未遂に遭遇したのは少なくとも6回、全部党内部によって雇われた人間の犯行だったと言われている。中国共産党保衛部が事前に予見、防止した暗殺計画は16回に上るとも。

 こうしてみると、十九大が「順当に開催されれば一大奇跡」と言われるのは、決して一部のアンチ習近平派の、思い込みやはったり予告と言い切れるものではなさそうである。十九大は無事に開催されるのか。まず、そこが注目点だったりする。そして仮に無事に開催されてもなお、中国内政が安定する見込みも薄いとすれば、本当の山場は十九大後に来る、とも言えるだろう。

 トランプと習近平のしくじり合戦が始まり世界は大混乱へ…。秋に党大会を控えた中国が国内外に対してどう動くか。なぜ中国人はトランプを応援していたのか。軍制改革の背景とその結果は? 北朝鮮の暴発と米中の対立、東南アジアへの進出の可能性など、様々な懸念材料が散らばっている、かの国を徹底分析する。
ビジネス社 2017年6月9日刊