このサイバーセキュリティ法と時同じくして「ネットニュース情報サービス許可管理実施ガイドライン」「ネット情報内容管理行政執法プロセス規定」なども施行された。これは微博や微信を使ったニューメディアに対する規制管理強化であり、微信などでメディアアカウントが当局の許可を得ずに、ニュース情報を提供してはならない、ということを規定している。2017年1月に出されたVPN規制の通達とセットとなって、ネットユーザー、公民がアクセスする情報のコントロール強化に拍車がかかる。

ネットの未来を中国に任していいのか?

 2020年にはネット人口9億人が予測されている世界最大の中国ネット市場。中国がかくも、インターネット規制・コントロールに力を入れているのは「ネット主権」という概念を打ち出しているからだ。つまり、海洋や領土、領空の主権のように、ネットでも中国の主権を主張する、ということなのだ。だから、中国でネットを使いたかったら、中国の法律、ルール、価値観に従え、ということである。領域を広げ、主権を主張することが、覇権につながる。それは海洋、宇宙、海底、通貨への覇権拡大の発想とも共通しているだろう。

 そして恐ろしいことには、この中国のネット主権の考え方に、中東諸国など結構賛同する国もあったりする。米国が生み出し米国が支配していたネット世界だが、中国が世界最大規模の市場を武器に主権を唱え始めたことで、ネット世界全体の形が変わろうとしているのだ。

 民主と自由を建前にする米国が生み出したネット世界は、本音はどうであれ、国境のない自由な世界という建前を打ち出していた。だが、中国はこれを真向から否定してネットをむしろ社会のコントロール、管理のためのツールであるとし、実際に信じられないような厳格なネットコントロールを実施している。これに対し、グーグルなど米国ネット企業までが、批判するどころか、中国のネットルールに従ってもいいからその巨大市場に進出したいという態度を隠さなくなってきた。

 そう考えると、このサイバーセキュリティ法は、単に中国の不自由なネット環境が一層不自由になった、という意味以上の影響力がある。中国が世界のネット覇権をとるや否や。そういうネットの未来を左右する動きの一つととらえるべきではないだろうか。

 ともに儒教を文化の基盤にしているから「中国人とは理解しあえる」と信じる日本人はいまだに多い。だが、習近平政権下の空前の儒教ブームは、政治に敏感な彼らの保身のための口パクにすぎず、中国人はとうに孔子を捨てていたのだ。 「つらの皮厚く、腹黒く、常に人を疑い、出し抜くことを考え、弱いものを虐げ、強いものにおもねりながら生きていかねばならない」中国人の苛烈すぎる現実を取材した。
飛鳥新社 2017年2月15日刊