個人情報保護については、最高人民法院と最高人民検察院の名義でわざわざ刑事事件に発展した場合の解釈を出しており、それによると、違法に窃取したり、あるいは売買、提供したりして、罰せられる“個人の敏感情報”が、およそ50ほど規定されている。それが犯罪を構成することになれば、3年以下の懲役刑や強制労働処分を課されることもあるとか。具体的に“個人の敏感情報”とは、IPアドレスや、通信内容、信用調査情報、財産情報などが挙げられる。

権力腐敗に迫る「人肉捜索」に刑事罰

 この解釈によって、はじめて、「人肉捜索」と呼ばれるネットユーザーらによる“身元調査”に対しても、刑事罰が科されることも明確にされた。特に本人が同意しないまま、その身分や写真、本名、生活の仔細などが大衆にさらされた場合、懲役3年以下の懲役刑および強制労働に課される。

 ネットユーザーによる「人肉捜索」というのは、プライバシーの侵害であり確かに褒められたことではないのだが、ターゲットになるのは、たいてい腐敗役人であったり、傲慢な金持ちたちであったり、「五毛」と呼ばれる政府や党組織に雇われたオンラインコメンテーターであったりする。大勢のユーザーたちの怒りを買う“非常識”な行動を起こし、それをネットで自慢げに公表するような特定の人物に対し、大勢のユーザーたちがIPアドレスを追及したり、SNSに投稿された内容を精査して、実際の住所や職業を特定したりして、ネット上でさらして世論を喚起して、圧力と社会制裁を加える行動といえばよいだろうか。ネット上の集団リンチともいえるが、同時に、その特定の人物が、それなりの権力背景をもっていて、現実の司法による裁きを受けることがないことも多々ある。

 代表的な「人肉捜索」事件として思い出されるのは、2010年の「俺のおやじは李鋼」事件だ。河北大学構内で農村出身の女子学生が、公安副局長のドラ息子が飲酒運転する乗用車に、はねられ死亡した。このとき、ドラ息子は「訴えらえるものならやってみろ、俺のおやじは李鋼だ!」と開き直った。このドラ息子の発言や、事件の詳細、“李鋼”の経歴などの個人情報が、「人肉捜索」によってネット上で拡散され世論に火をつけなければ、このドラ息子は裁かれることはなかっただろう、といわれている。

 また、郭美美事件では、郭美美という自称ネットアイドルのセレブ生活の背後にある中国赤十字の腐敗や権力との癒着に、ネットユーザーらの人肉操作はかなり迫った。(だが結局、郭美美が別件逮捕されただけで、中国赤十字の腐敗、権力癒着問題はうやむやになってしまったが)人肉捜索が厳しい刑罰の対象になるとすると、これも庶民の利益というよりは、喜ぶのはやはり腐敗官僚や権力サイドではないか、という気もする。