また自主開発爆撃機H-6Kは2011年の試験飛行を経て実戦配備が始まったばかりだが、すでに100機以上が製造・配備されていると報道されており、習近平政権下の軍事戦略において非常に重視されていることがうかがえる。台湾メディアによれば、東シナ海や宮古海峡あたりにしばしば飛んでくる爆撃機も空36師のH-6Kらしい。今回は単発の訓練ではなく、事実上のH-6K配備と考えるのが普通だろう。爆撃訓練も行われた、と一部で報じられている。

 この訓練発表が発信するメッセージは結構重要だ。一つは「南シナ海の実効支配は中国が握っており、すでに軍事拠点化も既成事実化している」という現実を見せつけている。環礁を埋め立てた人工島に突貫工事で作った滑走路は軍事利用に耐えられないのではないか、という多くの人たちの希望的観測を裏切って「人工島に作られた滑走路は爆撃機の離発着に利用できる強度がある」ということも示された。さらに「南シナ海を拠点にすればH-6Kは全アジアを作戦空域に入れることができる」「南シナ海の軍事拠点化の目的が西太平洋に打ってでることであり、そのための南シナ海をめぐる作戦を想定している」といった含みもある。

 H-6Kの能力について、私自身は専門家ではないので正確に評価できないのだが、この爆撃機が実戦配備された当初、ロシアの軍事専門家ワシリー・カシンは「飛行距離は8000キロ、さらに射程距離2000-2500キロの巡航ミサイルCJ-10Kの搭載も可能であり、いままでグアムを含む第二列島戦までとされていた攻撃範囲がハワイより先に広がる」「10年たってH-6Kの配備が増えた場合、アジアにおけるパワーバランスが中国有利に傾く」と分析していた。

米国に対して挑発を繰り返す理由

 そう考えると、この訓練は米国に対してのかなりきわどい挑発、あるいは牽制だともいえる。では、なぜ今、南シナ海で中国はこうした派手なパフォーマンスを伴って米国を刺激しているのか。単に米海軍の「航行の自由作戦」に対する牽制、というだけなのか。

 この爆撃機訓練だけでない。その翌々日には、中国海警船と海軍艦艇がパラセル諸島海域で合同パトロールを行ったことも発表された。公式発表ではないが、5月上旬、南シナ海の七つの人工島のうちにファイアリークロス礁、スービ礁、ミスチーフ礁に地対艦ミサイル、地対空ミサイルを配備したと米国の情報機関をソースとしてCNNが報じている。このときは中国外務省としては事実確認を避けていた。4月12日には南シナ海で空母「遼寧」を含む48艦艇と戦闘機76機、将兵1万人を動員した建国以来最大規模の海上閲兵式が行われた。海軍迷彩軍服に身を包んだ習近平がミサイル駆逐艦「長沙」に乗船し閲兵。海軍の増強を訴えた。

 トランプ政権誕生後しばらくは、中国側も南シナ海の人工島における軍事拠点化については、あまり刺激しないように気を付けていた。半島問題で中国が米国に協力的である代わりに南シナ海問題を一旦棚上げする水面下の約束があったのではないか、という説も流れた。だが中国は今年4月半ばごろから南シナ海における軍事的プレゼンスを見せつけるような動きに出ている。