ちょうど今年は1882年の中国人排斥法(1943年廃止)から135年目であり、百人会の報告は、華人差別に抗議する目的で行われているのだが、ニューヨークタイムズの報道と合わせて読むと、米中双方の“スパイ”狩りの手法の差がうかがえる。問答無用で闇に葬る中国のやり方の方が、この場合、威力が大きく、報道のニュアンスでは、中国に軍配が挙がっているようだ。

なぜスパイ合戦が表面化?

 なぜ、今、このような米中スパイ合戦が表ざたになってきているのか。スパイというのはもっと隠密裏に動くものではなかっただろうか。

 一つには、CIA自体がかつて持っていた統制力、機能が失われてきているのかもしれない。そもそもエドワード・スノーデンのような、米国インテリジェンス機関の内部を暴露するような米国人が登場すること自体、健全ともいえるし、米国情報機関のレームダック化を示しているともいえる。

 今話題のランサムウェアも、もともとはCIAが開発したマルウェア兵器がウィキリークスによって暴露され、それが外部組織によってモディファイされたものであるそうだ。共産圏で秘密工作の数々を成功させてきた往年のCIAの栄光を考えると、最近のCIAは失態続きだ。

 中国のネットニュース“政知道”によれば、さらに2015年にCIAが北京から完全撤退するかどうかの決め手になった事件が起きた。当時、米国人事管理当局のデータベースが中国人ハッカーによって攻撃され、これによって米国国務院および中国の米国大使館職員の中で、誰がCIAのスパイであるかを特定されたのだ。

 こういう失態が起きる前提として、CIAの中で、対中国工作員として、中国語のわかる華人が集中的に募集され、優遇されていることも指摘されている。ウィキリークスも指摘していたが、CIAの対中国工作の最大の悩みは、言語であった。特に最近の情報工作はサイバー空間におけるものが多いが、そうした専門用語の中国語世界が、中国任務に就くCIA職員のやる気を奪っているとか。

 そこで、CIAは急きょ、中国語人材を集めるために、華人職員を優遇して募集するようになった。たとえば、2003年、CIAが旧正月にあわせてロサンゼルス、サンフランシスコなどの大都市で、アジア系華人系の“前線”工作員募集の大々的な広告を打ったことがあった。このときに提示された年俸は4万ドルから9万ドルで、当時CIAは中国関連の情報収集・分析工作の強化に数千万ドルの予算を投入するということだった。さらに2010年に、CIAは中国語で華人職員の募集広告を打ち、このときは能力に応じて、3.5万ドルから12万ドルの年俸が提示されていた。だが、こうした大々的な華人職員募集が、二重スパイを入り込ませるスキになったともみられている。