
この4月から5月にかけて、アジアでは重要な事件が次々と起きた。南北会談があり、米国務長官ポンペオの訪朝があり、中国外相・王毅の訪朝と金正恩との面会があり、米中通商協議が北京で行われて物別れとなり、北朝鮮外務省が突然、米国を非難しだし、金正恩の二度目の中国訪問があり、そして米朝会談の日取りと場所が決定した。その傍らで、米国は核イラン合意を離脱、マレーシアでは92歳のマハティールが親中派のナジブをやぶって新首相の座についた。中国の李克強首相が初来日し、日中韓首脳会談および日中首脳会談が行われた。
それぞれが連動しており、米中関係を中心に、アジアのパワーバランスに激変が起きうる予感に満ちている。その震源地は半島ではあるが、それは中東の動きとも呼応しており、メーンプレイヤーは言うまでもなく米中である。だが、10日の日米首脳電話会談では、トランプは安倍晋三のことを朝鮮問題について「ビッグプレイヤー」と表現し、日本が半島情勢の動きにおいて影響力をもつキー国の一つであるという認識も示された。
そこで、6月12日にシンガポールで行われる米朝首脳会談を前に、プレイヤーとしての中国の影響力、そして日本の影響力について、少し整理しておこうと思う。
習近平が米朝会談に乗り込む?
シンガポールで6月12日に行われる米朝首脳会談には、トランプ、金正恩のほかに、第三国の首脳が参加する可能性が日本の毎日新聞などで報じられている。その第三の男は中国の習近平ではないか、とも言われており、米国家安全保障会議(NSC)のコーツ国際交渉担当上級部長は記者団の質問に対して、習近平や韓国の文在寅の参加について「可能性はある」と含みをもたせている。中国外交部も今のところ完全否定はしていない。
中国は朝鮮戦争の休戦協定に署名した当事国でもあり、金正恩からの訪問をこの1カ月半のうちに2回も受けて、事実上の後見人役を引き受けた格好になっている。だが、習近平政権が、この米朝首脳会談に対して、どのような立ち位置で関与するかはまだ見定められていない。シンガポール華僑の著名チャイナウォッチャーの頼涯橋や、シンガポール国立大学東南アジア研究所の研究員・藍平児らは、「第三国参加の可能性は高くない」とシンガポールメディアに語り、習近平が米朝会談の現場に入り込んで関与するとの見方には否定的だ。
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