もう一つのサプライズは北朝鮮が代表団を送り込んだことである。これに米国代表団がかなり強く反発し、しかも開幕日に北朝鮮が弾道ミサイル実験まで行ったものだから、北朝鮮代表団は非常におとなしく、ほとんど注意をひかないようにふるまっていた。どうやら、金正恩政権はとことん中国の言うことを聞くのが嫌なようである。中国としては北朝鮮に招待状を送ったのは、金正恩政権を見捨てない、というサインのつもりであったろうが、そういう中国のサインを結局、金正恩はミサイル実験という嫌がらせで拒否したことになる。

 こんなことをするならば、なぜ北朝鮮は代表団を送り込んだのか。金正恩の判断自体が揺れているのかもしれない。中国としてはそれでも、韓国代表団と北朝鮮代表団の会談をセッティングし、北朝鮮のコントロール維持に努力を続けるつもりのようではあるが。

 プーチンがこのサミットに出席したことも驚きである。一帯一路構想は、ある意味ロシアとは微妙に利益対立する部分がある。米国の動きもみて、ロシアも一帯一路の主導権を取りにくる可能性もある。

日本はまず、TPPから足場を

 それぞれの参加国の、本当のところの思惑はまだよくわからない。しかし「一帯一路」構想自体が、単なる自由貿易や経済協力を目的としたものでないことは、このコラム欄でも以前に紹介した通りである。これは非常に軍事的意味も持ち、世界秩序・ルールの再編成につながる機能もある。つまり一帯一路の最終的な目的が、中国主導でユーラシア大陸チームが一つの経済・軍事戦略圏を形成するというところにあり、それがEU・NATOやロシアとどのような関係になるのか、本来、利害が対立すると考えられる日本や米国ら環太平洋の海洋国家チームが、どのようにかかわっていくかによって、中国の赤い帝国主義国家化を助長することにもなれば、中国の野望を抑え込むことにもなるだろう。

 ちなみに私の個人的な考えをいえば、依然この一帯一路構想に日本が深くかかわるのはあまり良いとは思えない。AIIB加盟も急ぐ必要はないだろう。そもそもトランプ政権が何を考えているのか、まだはっきりしないし、トランプ政権自体がきちんと任期を全うできるかもわからない。かかわるならば、中国の野望を打ち砕くつもりでかからねば、こちらが餌食になりそうだが、日本にそこまでの絵は描けていまい。日本は、日本の戦略をもって、まずは米中がかかわっていない、日本主導のTPP早期発効という地味なところから足場を固めてほしいところである。

 ともに儒教を文化の基盤にしているから「中国人とは理解しあえる」と信じる日本人はいまだに多い。だが、習近平政権下の空前の儒教ブームは、政治に敏感な彼らの保身のための口パクにすぎず、中国人はとうに孔子を捨てていたのだ。 「つらの皮厚く、腹黒く、常に人を疑い、出し抜くことを考え、弱いものを虐げ、強いものにおもねりながら生きていかねばならない」中国人の苛烈すぎる現実を取材した。
飛鳥新社 2017年2月15日刊

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