ちなみにこの報告書がまとめられたのは2012年3月31日。だが、学校の施工式が行われたのは2011年8月21日で、報告書ができる7か月前にすでに学校建設は決定されていた。2015年9月、生徒が新校舎に移転したあとも、周辺では土壌修復工事が継続されており、地面が掘り起こされ続けている。中国科学院地理資源所の専門家が、この土壌修復工事で土中の汚染物質が周囲に拡散され、短期的に空気中の有毒物濃度が高まる、と指摘していた。校内の空気を検査したところ、アセトン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどが検出された。専門家は、空気汚染はあと5年から10年は消えないとしている。

強気な常州市、背後に利権と政争か

 このCCTV報道は非常に大きな反響を呼び、一部では“中国版ラブキャナル事件”だと囁かれた。1978年に米国ナイアガラ滝近くのラブキャナル運河に廃棄された農薬が、30年たって、埋め立て地に建てられた学校の生徒や住宅の住人に広範囲に健康被害を出していた事件だ。当時、米国はこの一帯を国家緊急災害区域に指定し、住民の一部を強制移住させるなどした。1980年のスーパーファンド法(包括的環境対処保障責任法)成立のきっかけになった。

 なぜこのような事件が起きたのか、その背景を考えてみたい。

 CCTVの報道を信じればこれは明らかに、常州市政府の怠慢による人災の側面が強い。だが、この報道をさらに注目させたのは、その翌日に常州市政府が地元常州日報に出した声明である。常州市政府としては、このように説明した。

 「2015年12月下旬、学校の北側の元常隆、華達、常宇化学工場跡地の土壌修復工事によって異臭が拡散し、生徒、教師の正常な学習に一定の影響が出た。このことを市と区の政府と党委員会は重視し、迅速な対応を行った。2月15日には、専門家に検査を行ってもらい、空気の質は完全に基準に戻っていると結論づけた」

 「3月下旬、学校、保護者がそれぞれ専門検査機関に依頼して、校内の空気、土壌、地下水の検査を行ったが、すべて検査結果は国家の基準に合致していた。目下2451人の学生が休学、4人が病欠、5人が転校手続きをとっているが、その他の生徒は登校し、210人の教師のうち3人が病欠している以外は、全員が勤務を続けている。学校の秩序は正常である」

 「結節性リンパ腫の青少年の罹患率は7%で、検査によって隠匿されていた症状が表面化することがある。原因はヨウ素不足やストレス…」

 などと、あたかも、問題はすでに解決済みでCCTVが過剰に煽情的な報道をした、という態度をとった。常州市は本来商業地に利用しようとしていたこの化学工場跡地を2016年1月に緑豊かな生態公園にする計画に変更していた。

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