政府は2011年から、この工場跡地を商業開発するため、土壌修復工事を開始した。この時、この地の土壌、地下水からはクロロベンゼン、四塩化炭素など有機化学汚染物や、水銀、鉛、カドミウムなどの重金属が基準値をはるかに超えて検出され、なかでもクロロベンゼンは、地下水から基準値の9万4799倍、土壌から7万8899倍という高濃度で検出された。

土壌修復の検査、農薬物質は含まれず

 北京大学公共衛生学院の潘小川教授はCCTVに対してこうコメントする。「長期的にこれらの汚染物に接触すれば白血病ほか各種腫瘍を発病する可能性がある」「ほかにもクロムやヒ素などが高濃度で検出されているがこれらはすべて発がん性がある。この短時間にこれほど高い集団発病率が出ているということは、この土地が非常に重度の汚染地であるということだ」。

 この常隆化学工場と江蘇省泰州市・泰興市などの化学工場計6社は2012年から2013年にかけて未処理排水約2.5万トンを如泰運河、古馬干河にこっそり流し、深刻な水質汚染を引き起こした容疑で摘発された。2014年8月には責任者14人が泰州市人民法院で環境汚染罪で懲役2年から5年、罰金16万元から41万元の判決をそれぞれ受けた。

 泰州市環境保護連合会が原告となって泰州市中級人民法院で環境公益訴訟を起こし、6社に対し合わせて賠償金として環境修復費1.65億元余りの支払い命令が下された。常隆側はこれに不服として江蘇省高級人民法院に上訴したが同年12月、一審判決維持が決定した。この裁判自体は、習近平政権になって施行された新環境保護法の成果としてメディアで喧伝されたが、問題はこの工場跡地の土壌修復がどの程度のものであったか、ということだ。

 常州市教育局副局長はCCTVのインタビューに、修復後の専門家による検査結果ではすべて学校用地としての基準を満たしていると答えていた。だが、CCTV取材班の調べでは、この基準を満たしているという報告書の水質検査項目はCOD(化学的酸素要求量)やBOD(生物化学的酸素要求量)といったもので、いわゆる農薬成分が含まれていなかった。土壌検査項目もPHやカドミウム、水銀、ヒ素、銅、クロムといった検査項目はあるが、農薬成分に対する検査は行われていない。環境評価報告書には土壌・水質汚染による健康被害の可能性について言及され、工事を行うことで地下の汚染が地表に掘り起こされて空気の汚染濃度が高まる可能性も指摘していた。学校建設工事に携わった現場従業員は、ポンプで水をくみ上げる時に農薬の刺激臭がしたと証言している。

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