琿春市中心から車で1時間ほどのところには、防川風景名勝区とよばれる北朝鮮、ロシア、中国の国境が接する地域がある。70元ほどの入場料を払って入る有名な観光名所であり、そこの展望台・竜虎閣からは図們江をはさんだ向こうの北朝鮮・豆満江市、ハサン湖事件(1938年の日ソ戦闘、張鼓峰事件)の名前の由来でもあるロシアのハサン湖、その向こうに日本海が一枚の絵のように見渡せる。日本人にとっては、あのあたりまでが満州だったのか、と思ったりすると、感慨深い風景だ。

国境警備隊のチェックの意外な緩さ

 この景勝区の中に、1886年に清朝政府が派遣した高級官僚・呉大澂とロシア側代表バラノフとが設立した「土字碑」がある。中国とロシアの国境線の上に建てられた碑であり、この土字碑周辺だけは中国人にのみ公開され、外国人は近づけない。だが、大勢の中国人と一緒にバスに乗ってしまえば、身分証チェックもあいまいで、中国語が話せない韓国人観光客は入場拒否されたものの、私などは中国人と見分けがつかず、国境警備の兵士に身分証を提示しろと言われても、「えー、駐車場の車の中において来ちゃったよ」というと、しかたないな、という感じで中に入れてもらえた。北朝鮮の核問題で中朝国境もよほど緊張しているのか、と思いこんでいたので、この国境警備隊のチェックの緩さにはちょっと驚いた。

 図們江沿いをずっとドライブしてみると、やはり、さほど国境警備が増強されているという印象もない。報道では本来10万人程度の国境警備は30万人に増強されている、ということだが、見た感じでは、私でも夜陰にまぎれて川幅数十メートルの図們江を渡って中朝を往来できそうなのどかさだった。昼頃、琿春口岸(中朝税関)の前を通りかかると、中国の食料品や日用品を積んだコンテナトラックが列をなしていた。税関は昼休みをとり午後2時からしか通れない。口岸の前にトラックを止めた運転手たちが、傍らでたばこを吸ってたむろしていたので、ちょっと話を聞いてみた。

「コンテナの中には何がはいっているの?」
「具体的には俺たちは知らないよ。食糧とか日用品だろう」
「金正恩が中国に来てから、輸送量は増えた? 禁輸されていた海産物とかもう運べるの?」
「海産物はまだダメだ。だが、もうしばらく我慢すれば解禁になるだろうね」

中朝関係に左右される北朝鮮ツアー人気

 この口岸からは、中国人ならば200~300元程度で羅先経済特区へのツアーにも参加できる。旅行代理店によれば制裁による中朝関係の悪化で、北朝鮮への観光客もずいぶん減っていた。もともと冬季の旅行は寒すぎて人気がない、という部分もある。

 だが、金正恩訪中以降、ツアーはやはり増えてきているようでもある。22日夜、中国人のツアー客の乗った観光バスが北朝鮮の黄海北道で交通事故を起こし、32人が死亡、2人が重傷という大惨事となった。金正恩訪中を受けて、今年は中止していた冬季団体旅行の再開を例年より早めて今月10日からスタートしたとか。