郭文貴は、インタビュー中、国際指名手配になったことについて、自分はグリーンカード保持者で、複数の外国パスポートを持っており、長年、中国パスポートを使っていないことから、中国から国際指名手配される条件にあっていない、と主張。その一方、自分に汚職の実態を暴露されることを中国当局が恐れていることはわかっていたので、指名手配される心の準備は2、3年前からできていた、とも語った。だが、指名手配の根拠とみられる、馬建への6000万元の賄賂などについては、事実ではないと否定。自分がこの3年の間、FBIともCIAとも連絡を取り合う関係にあり、暗に米国の庇護下にあることを訴えつつ「私の弁護士団と相談して対応を考える」としている。

 また自分が国家安全部に利用されていたと主張し、「国家安全部はビジネスマンをしばしば利用してきた」とも言う。国家安全部は郭文貴にパスポートを与え、外国の“要注意人物”に接触する任務を与えたという。具体例としては、習近平の委託を受けてダライ・ラマ14世に接触し、「ダライ・ラマの書いた孟建柱書記と習近平主席あての手紙を預かったこともある」という。

汚職問題ではなく権力闘争

 さて郭文貴の話は事実なのか。これは何とも判断しにくい。姚慶応という人物の存在も裏がとれない。だが、口から出まかせばかりとも思えない。中国のハイレベルの政治家、官僚が汚職の一つや二つやっているというのは当たり前だし、中国人ビジネスマンが工作員として海外の民族運動組織や民主化運動家に接触していることもよく聞く話である。

 だが、この件において、実のところ細部の事実の正確さは重要ではない。重要なのは、これは汚職問題ではなく、権力闘争であるという点だ。習近平は郭文貴の背後にいる政敵・曾慶紅を牽制する意味でも郭文貴を逮捕する必要があり、スキャンダルの暴露を抑え込まなければならない。一方、郭文貴は、背水の陣で習近平政権にスキャンダルを小出しにしながら、自分の身を守り抜かねばならない。矛先が、党序列一位で最高意思決定者である習近平にではなく、王岐山に向いているのは、習近平にメンツを与えて妥協を引き出すつもりかもしれない。

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