こうした状況で、おそらく郭文貴が焦ったのだろう。4月19日、VOAの衛星放送番組で、インタビューを生中継で受けることにした。中国問題に関心のある人々は、この中継に釘付けだった。この番組で、郭文貴がいよいよ、習近平政権のスキャンダルをぶちまけるのではないか、と期待したからだ。インタビューは全部で3時間、最初の1時間は生中継で、途中定時ニュースやCMを挟み、時間をおいて収録分を流す予定だった。

 ところが、結論を先に言ってしまうと、このインタビューは1時間が終わり、残り2時間に入ったところで突然、VOA側の都合で、視聴者に何のことわりもなく打ち切られてしまったのだった。ちょうど、習近平が王岐山を信用しておらず、王岐山自身の汚職問題の調査をするように、側近の公安副部長の傳政華に命じて、その協力を傳政華が郭文貴に要請した、という話が終わったタイミングだった。あまりのことに、世界中のチャイナウォッチャーたちが騒然とした。

暴露話は本当か、打ち切りは誰の圧力か

 私たちが知りたいことは主に二つある。一つは、習近平と王岐山の対立や、王岐山の汚職など郭文貴が番組で暴露した話は事実なのかどうか。もう一つは、インタビュー打ち切りは誰の圧力によって、誰が判断したのか。

 打ち切られる前の部分のインタビューの内容もなかなか刺激的なので、少し紹介しておこう。

 郭文貴によると、傳政華は郭文貴の家族や社員、資産を“人質”にとって、反腐敗キャンペーンの陣頭指揮をとる“中国の鬼平”こと党中央規律検査委員会書記の王岐山の家族のことを調査するように要求。王岐山の甥の“姚慶応”という人物が海南航空から借り受けている金や不動産、海外の預金の移動状況を調べるように、と命じたという。また、党中央政法委員会書記の孟建柱の複数の愛人についても調べるように要請したという。そして、この命令は習近平国家主席自ら、傳政華に下したものであり、習近平は王岐山と孟建柱のことを信用していないからこのような命令を下すのだと、傳政華は説明したという。

 また、郭文貴は自分が、傳政華からゆすられていたことの証拠に、電話の会話の録音の一部を提供。その録音には、傳政華の弟と思われる人物・傳老三が、郭文貴に5000万ドルを要求、そうすれば中国国内に残る家族と社員を自由にしてやる、という会話が記録されていた。電話は途中で老三から兄、すなわち傳政華に替わったが、録音状況は非常に悪く、声だけではなかなか人物を判別できない。傳政華は、王岐山のプライベートジェットの登録番号やその他調査に必要な資料も提供してくれたという。時期については触れられていないが、事実なら、傳政華が公安副部長になった2013年8月から、馬建が失脚し郭文貴が習近平政権から追われる身になる2015年1月までの間の話となる。

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