このところ、闇の政商にして巨額汚職で国際指名手配となっている郭文貴の話題で国内外とも騒がしい。1月、華字ネットニュース明鏡ニュースのインタビューで、前中央規律検査委員会書記の賀国強のスキャンダルを暴露したことは、少し話題になったが、4月19日の米政府系ラジオのボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューでは、現役の中央規律検査委員会書記の王岐山のスキャンダルが飛び出した。しかも、スキャンダルが飛び出したところで放送が打ち切り。これは、のちのち米中関係に影響する可能性があるので、きちんと整理しておく必要がある。

ICPO総裁人事で中国が攻勢

 郭文貴は北京五輪公園開発で暗躍した闇の政商であり、太子党の“ラスボス”とも呼ばれている元国家副主席の曾慶紅の腹心でもあった。すでに失脚した元公安副部長の馬建から習近平政権のスキャンダル情報を得て、そのまま米国に逃亡中だ。彼らのことについては、この連載コラムでも取り上げたことがあるので、参照にしてほしい(「米国を巻き込む習近平の権力闘争」)。

 2015年春にいわゆる「馬建失脚事件」「郭文貴事件」が発生、私はこうした事件が、習近平による曾慶紅をターゲットにした権力闘争の一環と捉えて見ていた。習近平はオバマ政権に、米国に逃げ込んだ郭文貴や、令計画(失脚済み)の弟・令完成らを、汚職容疑者として引き渡すように求めてきたが、さすがに弱腰と呼ばれたオバマでさえ、彼らの引き渡しに応じなかった。中国側が勝手に私服警官を米国に送り込んで、彼らを探し始めたのが、オバマ政権の逆鱗に触れ、二人の引き渡し問題は暗礁に乗り上げた。曾慶紅も未だ失脚せずに健在である。米国がこの二人の持つ“スキャンダル”(が本当にあるなら)を利用すれば、習近平政権を揺るがすこともできる。なので習近平は焦っていた。

 だが昨年12月に国際刑事警察機構(ICPO)の総裁にまんまと初の中国人を就任させたことで、情勢は習近平に利するように傾き始めた。中国はついに、ICPOに郭文貴の「国際指名手配書(赤手配書)」を出させることに成功したのだ。

 その事実が明らかになったのが4月18日。それ以前に4月7日、マールアラゴで開かれた米中首脳会談で、習近平がトランプに対し、こう述べている。「中国政府は汚職取り締まりに全力で取り組んでいるので、汚職に関わる容疑者の送還や横領品の回収への協力してほしい」。これに対して、トランプは「汚職容疑者の摘発と横領品の回収に関する中国の取り組みを支持する。中国と協力し、両国関係にマイナスの影響を及ぼす要素を取り除き、米中関係のさらなる発展を遂げられるよう努力しよう」と答えている。この流れから考えると、トランプ政権は、ひょっとして郭文貴や令完成を中国へ引き渡すこともあり得るのでは、という気もしてくるではないか。