独立系華字ニュースサイト・博聞が伝えた中南海消息筋の話によれば、パナマ文書公開後、習近平は政治局常務委員会拡大会議を招集、急遽対策を練り直したのだという。7人の常務委員のうち4人はパナマ文書に今のところ無関係であるが、「この事件については、7人ともが運命共同体」であるという認識に立ち、これを党内権力闘争に利用しない方向性で対策を協議された模様という。

12点で合意も揺らぎ止まらず、「次の火」は?

 合意点として以下が挙げられている。

 ①重要なのは自分たちの陣営の足並みを乱さないこと。外部勢力(この場合は米国?)に世論の鼻先をひきずりまわされてはならない。安定が一切に優先する、特に軍隊の安定が重要である。一切の方法を使って人心の安定をはかる。

 ②軍隊、武装警察、公安は職務を忠実に守り、持ち場を離れず党中央、党中央軍事委に従うこと。税関とネット監督管理部門は対策を強化し、パナマ文書の中国に関わるいかなるものも国内への流入を阻止する。

 ③公安部門は世論への注意を怠らないよう、パナマ文書を利用しようとした事件に警戒すること。群衆事件が起きれば適時に対応し、事態の蔓延を許さないこと。

 ④香港、マカオの連絡弁公室および特区政府と協力し、これを利用しての学生・群衆の街頭活動の扇動を防止すること。解放軍駐留部隊に警戒レベルを上げるよう要求し、香港、マカオの安定を図る。

 ⑤外交部および在外大使館に現地の華人メディア工作強化を行うよう指示し、パナマ文書を海外における反華活動に利用されないようにする。

 ⑥反腐敗キャンペーンを適度に実施し、基層民(農民・労働者)に対する反腐敗宣伝を強化し、庶民には党の反腐敗の立場が不変であることを固く信じさせる。

 ⑦党内ハイレベルの反腐敗キャンペーンの手は緩めない。国際社会に反腐敗キャンペーンの決心に動揺がないことを知らしめる。

 ⑧元中央軍事委副主席の郭伯雄の起訴審理、令計画事件の議事日程などを急ぎ、世論の視線をパナマ文書から逸らす。

 ⑨メディア、特にネットの統制を強化し、パナマ文書に関わる内容を絶対流れないようにする。

 ⑩中央メディアに、中国イメージの再構築をテーマに、多種多様の形式で宣伝報道させる。

 ⑪現役の政治局常務委員の活動報道、退職政治局常務委員たちの退職生活報道を増やし、中国指導者のイメージを再構築する。

 ⑫事態の進展にあわせて、相応の対応を先取りする。

 博聞の報道を信じるなら、習近平の緊張ぶり、うろたえ方は大方の予想を上回っていることだろう。特に、軍の安定、群衆事件への警戒のものすごさは、軍制改革が必ずしも順調でないこと、社会不安が増大していることが背景にあるのだろう。

 中南海消息筋の言葉によれば「習近平がこのように緊張しているのは、最近、党内でアンチ習近平の声が高くなり、“倒習ブーム(習近平引退勧告書簡に見られるアンチ習近平の空気)”とも関わりがある。党内の結束に不安があり、パナマ文書が、アンチ習近平運動の導火線になるかもしれないからだ」という。

 私はパナマ文書の内容そのものよりも、それが政権の根幹を揺るがすまでになり得ると習近平政権が恐れるほど、党内結束が緩み、反習近平の空気が濃くなっていることの方が驚きである。そして、これが中国の疑うように、米国による対中世論戦の発動の一手であるとしたら、続きはまだまだあるのかも知れず、時間が経つにつれ、思いもかけないところから“倒習”世論の火の手があがるかもしれない。

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