ただ習近平ファミリーの不正蓄財疑惑については、噂はあっても、やはり最大のタブーでもあった。思い出すのは、2012年6月末の、米ブルームバーグのスクープ。斉橋橋夫婦の蓄財の中身についてはかなり詳細に報じられていた。この時、夫婦2人で11企業を所有し、その資産合計は少なく見積もっても3億7600ドルは下らない、と報じられた。ちなみに同じ年にニューヨークタイムズが報じた温家宝・前首相ファミリー不正蓄財疑惑では合計資産27億ドルと報じられている。

 この時点では、これら資産形成において、斉橋橋夫婦が、習近平のコネを使ったり不正を働いた形跡についてまでは踏み込まれておらず、私の周囲の中国人たちの反応は「習近平は中国の政治家の中ではむしろクリーンな方といえるのでは?」というものであった。

米メディア報道などとは“ネタの筋”が違う

 だが、その後のブルームバーグ北京・上海支局に対する習近平政権の圧力は、尋常ではなかった。抜き打ち調査を行い、ブルームバーグ記者のジャーナリストビザ更新を盾にとって報道の自由を奪った。ブルームバーグは、“自己検閲”によって続報配信を取りやめたが、悔しまぎれに「中国はドイツ時代のナチス」と発言したら、さらに怒られて謝罪を求められた。そうなると、額の多寡ではなく、これら資産形成にはやはり相当後ろ暗いところがあるのだと疑わざるを得なくなってくる。

 その後の2013年4月、やはりICIJが通称「オフショア・リークス」と呼ばれる、匿名者から提供されたデータを、各国の記者らが手分けして裏を取り公開。この中にも習近平や温家宝のファミリーの名前が挙げられた。

 2015年4月にはニューヨークタイムズが、習近平、胡錦濤、温家宝らのファミリーが、不動産王・王健林率いる「万達集団」の株を取得していたという香港発情報を報道。斉橋橋夫婦運営企業が2009年に取得した株を13年に購入時の8倍の2.4億ドルで譲渡したという。この株取得などは、明らかに党中央指導部と大企業集団の癒着であり、8倍の利ザヤは賄賂と受け取られてもしかたない類の話である。

 こうした流れに続くパナマ文書の公表なので、その内容に特に驚くほどでもない。

 ただ、ブルームバーグやNYTの報道、あるいはオフショア・リークスと、パナマ文書が大きく違うところがあるとすれば、ネタの筋が違うと言われている。

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