「パナマ文書」の漏洩で世界中が大騒ぎである。日本も、有名企業の名前が散見されるが、政府として調査しないそうだ。調査すると、政府自身が“やぶへび”になるのかしらん、と勘ぐったりもするのだが、現役の国家最高指導者親族の名前も出ている中国などは、調査しないどころか、国民の閲覧禁止で自国に関わる一切の情報を流さない。習近平は政治局常務委員会拡大会議を開き、権力闘争保留で対応すべしと訴えたとか。
香港ゴシップに普段から接しているチャイナウォッチャーにすればさほど新鮮味のない情報に思えても、今の不安定化する習近平政権にとっては致命傷になりかねないわけだ。反腐敗キャンペーンを建前に、ばっさばっさと政敵を刈り取っている習近平自身が親族を使ってオフショアマネーロンダリングに勤しんでいると大衆に広まれば、社会経済不安と相まってそれこそ大暴動が起きても不思議はない。パナマ文書が、中国政治にどのような影響を与えるのか、考えてみたい。
大物政治家の親族ら9人の名が
パナマ文書はパナマの法律事務所・モサック・フォンセカが作成したいわば顧客リストのようなもので、英バージン諸島などオフショア金融センターを利用する21万4000企業の取締役、株主らについての詳細な情報という。容量にしておよそ2.6テラバイトのデータ、総数1150万件に及ぶ。文書に記載されている、著名な政治家、公人およびその親族の名前は12カ国140人以上。4月3日、裏付け作業にあたった国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が提携メディアとともに公開したあとの衝撃は相当なものであった。
情報の出所はミステリアスで、2015年に南ドイツ新聞にジョン・ドウ(名無しの権兵衛)と名乗る匿名メールで「データに興味はあるか?」「私の命が危ないので、直接会うことはかなわないが、どのネタを公表するかは君たちに任せる」という問い合わせがあり、南ドイツ新聞サイドが興味があるというと、データが提供された。「狙いはなんだ」と南ドイツ新聞サイドが問うと、「犯罪を明らかにしたいだけだ」という。そのメールのやりとりも、ネット上で公開されている。その後、ICIJにも同じデータが送られ、各国記者らが協力して裏取し、裏取したデータについては、ICIJのサイトで公開されている。データはまだすべて裏取が終わっているわけではなく、裏取が終わり次第、残りもサイトなどを通じて公表されるという。
モサック・フォンセカは世界第4位のオフショア関連法律事務所で、その秘密保持能力も高く評価され、世界中の政治家や企業家、セレブたちが資金洗浄に利用していた。なぜ、この機密が流出したかは不明だが、目下の報道では、内部リークというよりは外部からのハッキングではないかという説が強い。
ここで“チャイナウォッチャー”たちが興味を持つのは、もちろん中国要人リストである。
なにせ現役・引退を含め、党中央政治局常務委員クラスの大物政治家の親族ら9人の名前が挙がっているのだから。
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