ただ、半島問題の本質は、北朝鮮の核問題というよりは、米国と中国の軍事プレゼンスの問題であり、半島での軍事プレゼンスが強い方が、アジア・太平洋地域の支配力が強くなるという意味では、米中の覇権争いの問題といえる。中国の本音をいえば、北朝鮮が、米軍が駐留する韓国と中国の間にいてくれる現在の状況は望ましいものであり、金正恩政権に対する中国のコントロール力が以前に比べて衰えたとしても、米軍に排除されて、そのあと、親米政権でもできるようであれば、非常に困る。もちろん、そんなことになるようであればロシアも黙っていない。

いずれにしても厄介な二大強国

 中国人民大学国際関係学米国研究センター主任の時殷弘が、ニューヨークタイムズに次のようにコメントしていたのが的を射ているだろう。

 「習近平は(訪米前に北朝鮮問題で制裁強化などの)準備をすでにしている。おそらく、北朝鮮に対する圧力を強化していくだろう。しかし、中国としての戦略のボトムラインは堅持する。つまり北朝鮮は存続させる。米国の軍事パワーによる半島統一の潜在的可能性を許すわけにはいかない」

 米国が金正恩個人を排除するというだけなら、それに代わる政権が中国との同盟関係を維持する親中政権であるならば、中国としても許容範囲にとどまる。だいたいリビアもそうだったが、米国が軍事介入するとぐちゃぐちゃになることが多いので、ぐちゃぐちゃになってから、国連のメンバーとして介入することもできよう。そのときは、中ロが手を組む可能性が強い。

 シリア攻撃は中国にとってもメンツをつぶされた事件だが、良いことも一点ある。これで米ロ関係が悪化するということだ。おそらく今後、トランプ政権内の親ロ勢力は駆逐され、中国が当初懸念していた、米国がロシアを取り込み中ロ“蜜月”関係に楔をいれて、中国を孤立させるという戦略が立ち消えとなるとしたら、中国としては当面安心できる。

 そう考えるとトランプに挑発され翻弄されつづけた習近平であったが、結果的にはそれなりに満足のいった首脳会談になったのではないか。

 もっとも、習近平政権の本当の敵は、国の外にいるのではなくて内に存在する。この国内の敵、つまり政敵や党の権威に疑いを持ち始めた中産階級や社会不満を募らせる人民を抑えて、国内の団結を図るには、実のところトランプくらいわかりやすい“中国を挑発する敵”の存在はむしろありがたいかもしれない。そして日本にとっては、米中は関係が良すぎても、対立が深まっても、不安と懸念材料が増える一方の、厄介な二大強国なのである。

 ともに儒教を文化の基盤にしているから「中国人とは理解しあえる」と信じる日本人はいまだに多い。だが、習近平政権下の空前の儒教ブームは、政治に敏感な彼らの保身のための口パクにすぎず、中国人はとうに孔子を捨てていたのだ。 「つらの皮厚く、腹黒く、常に人を疑い、出し抜くことを考え、弱いものを虐げ、強いものにおもねりながら生きていかねばならない」中国人の苛烈すぎる現実を取材した。
飛鳥新社 2017年2月15日刊