“はったり”の一発目は、当然、会談前にトランプがフィナンシャルタイムズのインタビューで明らかにした、米国の北朝鮮に対する武力攻撃をにおわせる単独制裁の可能性への言及である。二発目はもはや、“はったり”ではなく、本気の恫喝、シリアへのミサイル攻撃だ。

北朝鮮、シリア、台湾、貿易戦争…

 会談中、習近平は、オバマに見せた横柄な態度は控え、“ぎこちない笑顔”を浮かべて対応したが、さすがシリアへの爆撃を行われたことへは、狼狽を隠せなかったようで、シリア攻撃にあいまいに「理解」を示して晩餐会はそそくさと切り上げて部屋に戻って対応を協議したもようだという。習近平が帰国したあと、中国の公式メディアは我に返ったのか、ようやくシリア攻撃について米国に批判的な報道を始めた。

 中国はISとは対決姿勢を示すが、アサド政権とは親密な関係にある。アサド政権が化学兵器を使用したことに対しての制裁として、習近平との会談に合わせて巡航ミサイル59発を発射したことは当然、習近平にしてみれば、メンツをつぶされたと感じただろうし、なにより、北朝鮮に対する先制攻撃が、口先だけのはったりではないというメッセージをきっちり中国に伝えることができただろう。

 だが、この米中会談が中国にとって悪いものであったか、というと実はそうでもないのではないだろうか。

 トランプが大統領に就任して以来、中国に対して行った駆け引きを振り返ってみよう。

 最初に切った最大の切り札は、一中政策の変更をにおわせる台湾カードだった。ついで、中国からの輸入品に高額関税をかけ、為替操作国認定するという貿易戦争カード。中国は貿易戦争については、米国からの輸入農産物などの報復の高関税をかけるなど対抗手段もあれば、妥協の用意もあったが、台湾問題の揺さぶりをかけられたときには、非常に狼狽した。米国が本気で台湾と同盟関係を結び中国に対抗するようなことにでもなれば、つまり中台統一の可能性が完全に失われる事態になれば、おそらく習近平が失脚するどころか共産党政権の執政の正当性や権威が完全に失われ、体制が解体しかねない話だ。