香港の行政長官選挙では親中派の林鄭月娥が、世論調査で高い支持を集めていた曾俊華を大差で破ったが…(写真:ロイター/アフロ)

 先週の日曜日は香港の行政長官選挙であった。2014年秋の“雨傘革命”はまさに、この選挙において“普通選挙”を実施しようと願った反政府運動、反中国運動であり、結局は挫折したのだった。なので、今回の選挙は約1200人の「選挙委員」による間接選挙のままである。結果から言えば、中国共産党中央が推していたとされる、元政務官の林鄭月娥(キャリー・ラム)が、香港大学の世論調査で56%とラムより27ポイントも高い支持率を誇る曾俊華(ジョン・ツァン)候補にダブルスコアの大差で勝利し、香港初の女性行政長官となった。世論調査の支持率と選挙結果が違うのは、米国大統領選挙の例もあるので、不思議なことではないが、米国選挙と違うのは、世論調査結果が操作されているのではなく、選挙結果の方が“コントロール”されているということだろう。しかもそのコントロールバーを握っているのは中国である。

 中国への返還から20年目、選挙結果から香港の行方を考えてみたい。

777票にまつわる噂と汚れ役の責務

 投票総数1194票、有効票1163票のうちキャリー・ラムの得票は777票。対抗馬のジョン・ツァンは365票。香港本土派が最も期待を寄せていた元裁判官の胡国興はわずか21票。ラムのスロットマシーンのジャックポットのような得票数は何かを暗示しているのかもしれない。七の広東語発音が、侮蔑語の発音と似ていることから、選挙管理当局がひそやかな抵抗の気持ちを込めて、この得票数にした、などという噂も流れた。

 しかしながら、同じく行政長官選に出馬した親中鷹派の葉劉淑儀(レジーナ・イップ)と比べれば、政務官として、それなりに真面目に仕事をしてきた有能な官僚という印象もある。彼女の不人気は、「雨傘革命」が発生したとき、梁振英(CY・リョン)行政長官に代わって、メディアで政府の立場を発言し、学生代表らと対面したときの譲歩を拒否した強面の印象と、北京が露骨に後押していることがあるからだろう。だが、逆に言えば、一官僚としての立場と責務を自覚しての汚れ役を引き受けたわけで、少なくとも学生たちとの対面を逃げ回っていた行政長官よりもよっぽど、ましである。