この任志強バッシングを受けて北京市西城区党委員会は、任志強に対して党籍剥奪処分などを行おうとしたのだが、王岐山は2月28日、汚職Gメンこと中央規律検査委員会巡視隊を中央宣伝部に派遣し突然の“ガサ入れ”を行って、中央宣伝部およびメディアを黙らせるとともに、3月1日に中央規律検査委機関紙「中央規律検査監察報」上に「千人が唯々諾々と語るより一人の士の諤々とした発言の方がまさる(千人之諾々、不如一士之諤々)」と題した原稿を発表させる。

 タイトルにある“一士”が任志強を指していることは間違いなく、中央規律検査委、つまり、王岐山は習近平礼賛メディアを批判する任志強を表立って擁護したことになる。ちなみに、その直後に前回のコラムで取り上げた「無界新聞・習近平引退勧告公開書簡事件」が起きたのだ。この件については、習近平が激怒して犯人探しが猛烈な勢いで行われているところだという。新疆ウイグル自治区主管の新興ニュースサイト・無界新聞は閉鎖が決まり、この件に関与した疑いで著名コラムニスト賈葭ほか30人前後が、身柄を拘束され取り調べを受けている。私の聞いている範囲では、身柄拘束された人たちのほとんどが事件に無関係の“冤罪”らしいが、取り調べがあまりに厳しいので、あることないこと“自白”してしまい、それが権力闘争に利用される可能性もありそうだとか。

その時、習近平が止めなかったゆえに

 この事件の真相はまだ不明であり、任志強バッシング事件とのつながりがあるかどうかも分からないのだが、一つ言えるのは、主だったメディアは“党への忠誠”を声高に叫んではいるが、彼らの言う党への忠誠は必ずしも習近平への忠誠ではない、ということである。3月3日の人民日報は「ある指導者はメンツを失うのを恐れ、群衆の批判の言葉を聞こうとしない」という題の論説を掲載。この“ある指導者”が習近平を指すとしたら、中央規律検査委巡視隊の進駐を受けて、中央宣伝部が王岐山批判から習近平批判に転じた、という見方もできる。

 3月23日、新浪微博のあるアカウントが「北京市西城区の規律検査委員会で、ほらふき任(志強)の党籍剥奪が決定された」というコメントを発信。すぐさま削除され、これは習近平と王岐山の対立を煽るための「デマである」との見方が一部消息筋の間で伝えられたが、その一方で、習近平は本気で任志強潰しに動き始めている、という情報もやはり一部消息筋に出回っている。習近平は実はメディアが自分を礼賛しすぎるのを苦々しく思っており、メディアが任志強バッシングを始めた時、自らやめるように指示した、という情報も大紀元など体制外華字メディアで報じられているが、同時に、任志強・王岐山バッシングの時、習近平はメディアを止めようとしなかったので、王岐山と習近平の亀裂はもはや決定的となった、という話も耳に入っている。私はどちらかというと後者の情報を重視している。