国務院の権限を縮小、党と一体化

 今回の国務院改革の最大目的は、首相が主導する国務院の権限を縮小し、党と国務院機能の一体化を図ることだといえる。今回の憲法修正によって国家主席任期は制限がなくなったが、「党の指導」が憲法条文に盛り込まれ、国家運営における党の権力の位置が憲法に明記された。もともと党と政府の二重構造で運営されていた国家だが、この憲法修正によって党と政府の一体化が目指され、党中央の核心である習近平が終身国家主席として国家運営を指導することに憲法が根拠を与えることになる。

 だが、実際の国家運営は首相を中心とした国務院の官僚たちが執り行う。国家主席職は国の代表として主に外交シーンでは一番目立つが、内政の実務を取り仕切るのは本来首相であり、天安門事件以前は、首相権限の方が強く国家主席はどちらかと言うと名誉職的なポジションだった。

 もちろん、国務院の機構に対応する党組織が存在して、これまでも党組織と国務院機構では、党組織の権限の方が強かった。しかしながら、国家発展改革委員会、国土資源部など、エネルギー・土地開発といった分野で利権を持つ国務院機関はそれなりに強い権限を維持しており、経済政策などでは、習近平の直属ともいえる中央財経指導小組の打ち出す方向性に微妙に抵抗したりもしていた。

 また国務院官僚は大卒の優秀な共青団派閥が多い。官僚的な彼らは上司に比較的従順であるがゆえに、上司(国務院の場合は首相)の頭越しに権力をふるう習近平のやり方に、違和感や抵抗を持つ者は多く、それがサボタージュにつながるなどの問題も出ていた。

 こうした問題や党と政府の二重構造の矛盾を解決し、国務院機関の権限も習近平を核心とする党中央が掌握できるようにするのが、今回の国務院機構改革の狙いだと見られている。

 自然資源部、生態環境部、農業農村部、文化旅游部、国家衛生健康委員会、退役軍人事務部、応急管理部、科学技術部、司法部、水利部、審計署などが新設、改変統合され、監察部、国土資源部、環境保護部、農業部、文化部、国家衛生計画出産委員会などは解体された。きわめて強い権限と利権をもっており、マクロ経済政策で習近平路線とかなり対立していたように見受けられる国家発展改革の職責はかなりはぎとられて、新設省庁に分散されている。

 監察部がなくなった代わりに、国家監察委員会が国務院と同格の権力をもって設置され、国務院官僚の汚職・腐敗・サボタージュをばしばし取り締まることになるだろう。結果として国務院の機構は国務院弁公庁をのぞき、26に統合。これは国務院機構としては2013年の省庁統合で25に削減されて以降、一つふえて26になったが、習近平への抵抗が激しかった国家発展改革委員会や国土資源部はその権力が縮小、あるいは解体され、国務院官僚の首根っこを押さえる監察部門が国家監察委員会として国務院から独立したという点では、権限は国務院史上過去最小になったといえる。この省庁改変に伴う人事異動を建前に、習近平に反抗する主要官僚たちが一斉に排除されるのではなかろうか。

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