その政府活動報告の中身だが、注目点は大きく分けて五つある。

 まず、今年の経済成長目標は6.5%に引き下げられた。政府活動報告にあげられる成長目標は中国の実際を無視したフィクションの数字ではあるが、党内政府内のある種の空気を伝える役目はある。

 昨年の全人代で目標値を6.5~7%と幅を持たせたのは、7%成長を維持しないと2020年所得倍増計画の青写真が崩れるから無理やり7%の数字を入れたのだったが、今年はその建前を捨てざるを得ないほど経済が悪くなりそうだ、と党と政府も認めているということだ。

 救いはトランプ政権の登場で、今年、中国経済が悪くなるのは、(共産党政治のせいではなくて)トランプのせい、という言い訳ができる。だからこそ、トランプ政権があれほどドラゴンスレイヤー(対中強硬派)ぞろいの布陣にもかかわらず、中国がそこはかとなくトランプに好意的なのだろう。

 実際のところは、中国経済の悪化の最大の要因は、党の経済活動に対する関与・管理によって、フェアで公正な競争や合理的な経済活動が阻害され、市場や企業の信用が失われているせいであり、外圧要因などむしろ小さいほうであろう。

「民衆の極度の不満」の存在を認める

 二つ目は、政府活動報告において、初めて、“民衆の不満の感情はすでに非常に深刻で重大”と、大衆の極度の不満の存在を認めた。つまり、政府活動報告にそう盛り込まずにはすまされないほど、中国の社会不満は深刻であり、この不満の矛先が党と政府にむかっていることを認識したうえで、解決に決意を示したわけだ。

 本来、政策の大方針を打ち出す政府活動報告で、あえて携帯電話のローミング料金、長距離料金廃止といった庶民受けを狙った具体策を盛り込んだのも、こうした社会不満をなんとか緩和し、党から乖離しかけている大衆の支持をつなぎとめようと必死であるということの裏返しかもしれない。

 ちなみに、この携帯電話料政策が読み上げられた時が、一番長い拍手が起きた。政府活動報告では、民衆の不満の要因を貧困問題にまとめていたが、貧困だけともいえない。貧困対策と銘打った強制移民も、環境問題も不満の温床だ。ある程度の知識層にすれば、報道の自由や思想・教育の自由に対する締め付けや、密告制度奨励や市民格付制度の導入などの管理社会化に対する息苦しさなども不満の大きな要因になっており、それが後述する「党の権威」問題につながっている。

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