3月5日に全人代が開幕。政府活動報告から、錯綜する思惑や駆け引きが浮かび上がる(写真:ロイター/アフロ)

 中国中央テレビ(CCTV)で放送中の歴史ドラマ「大秦帝国之崛起」が結構、人気なのだが、先日、両会(全国人民代表大会=全人代と中国人民政治協商会議=政協、中国の国会に相当)開幕直前に放送された第30回が、ちょっと話題になっている。秦国人が、趙国の“スパイ”を金で雇おうと、内奸(裏切者)のリストが書かれた竹製の書簡(小道具)を開くシーン(1分37秒あたり)で、なんと一番目立つところに習近平に似た名前が篆刻書体で書かれていた、という噂が広がった。

 すわ、これはCCTVが発する“倒習信”(習近平打倒のメッセージ)か、と騒ぎになりかけたが、ネットユーザーのコラージュだという否定意見が流れたあと、中国のネットではこの噂は封じ込められた。昨年の両会のときは、新疆ウイグル自治区主管のネットメディア「無界新聞」に習近平引退勧告書簡がアップされたり、新華社通信に意味深な「誤字」があったりと、アンチ習近平のムードが体制内に存在することが明らかになったが、今年も、そうした空気は続いている。

 ちなみに、この“裏切者リスト”パロディに上がっている政治家の名前は習近平だけでなく、よくみると温家宝や李克強も載っているので、習近平だけをターゲットにしたというよりは、中国の今の政治全体への不満、批判が込められているともいえよう。いずれにしろ、中国社会の間には、漫然と政治に対する不満が漂っている。そういうムードの中で、開幕となった全人代の政府活動報告について、今回はとりあげたい。

「党内不協和音」響く開幕式

 5日に全人代の開幕式があり、恒例の首相による政府活動報告読み上げが行われた。昨年の李克強は、ものすごいしゃがれ声で、健康状態が悪そうだったが、今年もやはり、読み間違い、読み飛ばしが多く、彼はこの秋で引退するかもしれない、と思わされる調子の悪さだった。そして、ひな壇席でそれを聞く習近平は、昨年と同じく、ずっと憮然とした表情で、相変わらず拍手もほとんどしなければ、李克強がひな壇に戻るときに、握手もしなかった。党内不協和音が聞こえてくるようである。