もう一つの注目点は、十三次五カ年計画(十三五計画、2016~2020年の経済計画)の中身だ。2021年は中国共産党建党100年目であり、習近平政権の二つの100年目標の一つである2021年に全面的小康社会(そこそこゆとりある社会)の建設を実現するための最後の経済計画である。インフラ建設の強化が打ち出され、中でも北京と台北間の高速鉄道計画が話題をさらった。もちろん、台湾サイドの意向などお構いなしの「言うだけ」計画で、中台統一を警戒する台湾は大反発している。

十三五計画の肝は「安楽死」、改革の分業は崩壊

 十三五計画で一番、キモとなっているのはインフラ建設資材を生産する鉄鋼、石炭、アルミ、ガラス、セメント分野のいわゆるキョンシー企業、ゾンビ企業とよばれる万年赤字国有企業の“安楽死”問題だ。過剰生産分の資材をインフラ建設強化で消化しつつ、ゾンビ企業を整理して、これに伴う失業者対策に1000億元を拠出して基金を創るという。今後2~3年で600万人前後をレイオフ(一時解雇、事実上の失業)するという予測が伝えられているが、90年代、自ら憎まれ役を買ってでた鬼宰相の朱鎔基ですら道半ばであった国有企業改革を、ストレスに弱そうな李克強に貫徹できるか。失業者問題は中国社会の不安化を一気に加速する可能性もある。

 今回の政府活動報告でも「改革」と言う言葉を70回前後連呼していたが、連呼されるほどに、今の中国に改革を断行できる力量は見えない。2013年の三中全会(第三回中央委員会全体会議)で打ち出された“リコノミクス(李克強経済学)”では法治化、市場化、政府介入の減少こそが改革の骨子であった。ところが現実には、株価も為替も政府介入、行政指導の連続であり法治化、市場化はむしろ遠のく印象だ。

 今やリコノミクスという言葉は忘れさられ、キンペノミクス、シーコノミクス(習近平経済学)という言葉を使うようになった。つまり、国家主席と首相の本来あった分業体制は完全に崩れている。江沢民と朱鎔基は相当仲が悪かったが、少なくともこの分業体制は機能しており、首相が全面的に指揮と責任を引き受けて改革に取り組むことができた。それと比べると、今回、90年代以上に困難な経済改革に、誰が責任をもって命がけで取り組むかというと、そういう人物が見当たらないのも、中国経済改革の先行きの暗さの一因だろう。