さらに王毅の外相続投および国務委員(外交担当)兼務説も、対米外交重視人事だという見方がある。王毅自身は米国政財界にもトランプ政権にも強いパイプがあるわけではないが、日本に対しては相当強い人脈を握っている。安倍晋三とトランプの個人的関係が相当よく、安倍の発言がトランプの外交政策に影響力を持つ可能性もあるとみて、習近平政権も、従来の日本を挑発することで日米離反を画策するやり方から、日本を懐柔するやり方に変えていく必要性も認識しはじめているということか。

 王毅の外相職の後継者として、中央対外連絡部長の宋濤が就くのではないかという説もある。その外交実力はまだ不明だが、王岐山、劉鶴、楊潔篪、王毅、宋濤の中で、一番習近平に従順であるといえるのは宋濤だ。つまり完全なお友達人事といえる。主に北朝鮮労働党との交流を中心とした社会主義国との思想交流を担うのだが、逆に言えば、習近平の対北朝鮮パイプは目下、宋濤に頼るしかない状況ともいえる。

「米中新冷戦時代」突入の予感

 こうした外交トップメンバーはおよそ習近平に直接指示を仰ぎ、直接報告することができるという意味で、対米外交の操縦桿を習近平が握る布陣ではある。習近平政権がかくも対トランプ政権重視で外交を考えている背景には、喫緊の問題として北朝鮮の核問題がある。が、その後に明らかに米中新冷戦時代への突入の予感があることが大きい。

 それはトランプ政権の国家安全保障戦略をみても、またマティス、マクマスター、ケリーといった軍人出身官僚たちを頼りにする政権の性格からみても想像できよう。中国サイドのトランプ政権分析は、軍人出身官僚とティラーソンやムニューシンら国務省、財務省官僚の間では対中姿勢に温度差があり、またクシュナー夫妻の影響力も強い。その一方で、トランプ自身の対中観には未だ定見がないようで、むしろビジネスマンらしく目前のコストやリスク、利害を見極めて態度を頻繁に変える「ディール」ができる人物と見ている。

 だからこそ、北朝鮮問題と貿易問題、人民元、その他、南シナ海や東シナ海、インド洋などの安全保障問題を同じテーブルに並べて交渉していく必要があり、対米外交、対米安全保障、対米通商の全部の操縦桿を習近平自身が握りたい、ということだろう。トランプはしばしば習近平個人に対しては歯の浮くような礼賛を送っており、習近平自身はトランプと対等に渡り合えるとの自信をもっているのかもしれない。

 当面は王岐山、劉鶴、楊潔篪らの財界・金融界、国務省、財務省ルートを通じて、北朝鮮マターを材料にトランプの対中強硬姿勢を抑えつつ、同時にトランプ政権とうまく渡り合えることを見せつけることで国内での習近平独裁体制固めを加速させていきたい、というところだろう。そう考えると、トランプの冗談とも本気ともとれない、習近平“終身主席”を歓迎するような発言は、習近平にとっては大いに利用価値があるのである。

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