そして、中国は核保有の大国論理で、米国も北朝鮮の核兵器など本気で脅威とは思っていないはずだと考えている。米国がかくも北朝鮮の核の脅威を強く言うのは、それを口実に、アジアにTHAADを持ち込み、アジアのNATO作りを進めようとしているからだと警戒している。

 中国が目下、南シナ海の軍事化を急ピッチで進めていることからもわかるように、今、アジアにおいては、米中の軍事的陣取り合戦の真っ最中なのである。中国は南シナ海で軍事拠点化を進め、米国は極東で日米韓軍事同盟の強化を進めている。中国の立場からいえば、南シナ海を軍事問題化しているのは米国の方で、韓国のTHAAD配備問題以前から、米国が中国の南シナ海での脅威を煽るのは、アジアにおけるTHAAD配備の口実にするつもりだという警戒論もある。

本質は「北朝鮮の核問題」にあらず

 中国の立場から今回の件を見ると、問題の本質は「北朝鮮の核問題」ではなく、米中のアジアの軍事化競争における駆け引きであり、今後の展開も、アジアにおける米中対立のシナリオから見た方が分かりやすい。中国側がこれは妥協ではなく、策略だと言っているのが本音であれば、この合意によって中国の方が、アジアの軍事化のコマをより多く進めることができるだろう。実際、王毅とケリーの会談では、南シナ海における中国のミサイル紅旗9配備問題もテーマになったはずだが、こちらの話し合いは平行線に終わったようだ。このまま、南シナ海のミサイル配備やレーダー配備を恒常化し、最終的には防空識別圏の宣言まで行っても、米国は文句を盛大に言うぐらいで、具体的に対中関係を先鋭化させるようなアクションは起こさないかもしれない。

 さらに言えば、北朝鮮の“極めて厳しい制裁”によって北朝鮮が核開発を断念する、という結果を本気で期待しているのは、実際のところ日本ぐらいではないだろうか。繰り返すが、中国にとっては、制裁に効果があるかないかよりも、北朝鮮の核問題を口実とした米国のアジア軍事進出をいかに抑え、そして自らの南シナ海での軍事進出を有利に進めるかの駆け引きの方が重要なのだ。少々、北朝鮮に苦しい思いをさせて、今までの中国に対する舐めた真似を反省させれば、十分であり、北朝鮮の体制崩壊など望んでいない。国連の制裁により、北朝鮮の体制が崩壊すれば、その核兵器の安全を確保するために米軍などが北朝鮮内に派遣される可能性があるが、それは中国としては絶対避けたいシナリオだ。