(4)憲法第1条第二項の「社会主義制度は中華人民共和国の根本制度」という部分に加えて、「中国共産党の指導は中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴である」と書き入れ、条文中に「共産党の指導」という文言が初めて入った。

(5)第3条第三項に中国の最高権力機関とされる人民代表大会の監督責任が及ぶ機関として、「国家行政機関、審判機関、検察機関」とあるところを「国家行政機関、監察機関、審判機関、検察機関」と監察機関つまり新設される国家監察委員会の権威を国務院と併記するほど強いものとした。これに従い全人代の職権の中に国家監察委員会主任の選出、罷免などの条項が付け加えられ、国家監察委員会の条項が書き加えられた。

(6)第24条第二項において、「国家は祖国を愛し、人民を愛し、労働を愛し、科学を愛し社会主義の公徳を愛することを提唱する」の部分を「国家は社会主義の核心的価値観を提唱し、人民を愛し…以下略」と修正、「社会主義の核心的価値」という言葉を盛り込んだ。

(7)第27条に新たに第三項を付け加え、国家公務員の就任時に憲法宣誓を公開で行うことを規定。

(8)第79条第三項において、「中華人民共和国主席、副主席の一期ごとの任期は全国人民代表大会任期と同じとし、連続二期を越えない」という部分を「中華人民共和国主席、副主席の一期ごとの任期は全国人民代表大会任期と同じとする」として二期10年の任期制限を撤廃した。

「監察委独立的権限」で「移民」がNGワードに

 この中で、やはり中国内外が騒然としたのが、第79条の修正、国家主席任期制限の撤廃である。これにより、国家主席任期は無期となり、習近平が国家主席を2023年以降も務め続けることが可能となった。国家指導者の任期が無期限となるということは、独裁を確立するための憲法的裏付けができたということであり、習近平の野望を反映した憲法改正である。ブルームバーグその他、欧米メディアは、習近平のプーチン化などと評した。

 次に中国人民の肝胆を寒からしめたのは、国家監察委員会に、国家行政機関、司法機関と並ぶ強い独立的権限が与えられたことである。これまでの習近平の反腐敗キャンペーンは党中央規律検査委委員会が主導で行ってきた。党の内規に従って行われてきた。だからターゲットはあくまで党幹部であった。

 だが今後の反腐敗キャンペーンは憲法に基づく機関が国家監察法を根拠に国家機関に及び、党外人士、一般官僚、国有企業幹部らも含めて、その汚職を摘発していくということである。反腐敗キャンペーンは事実上、習近平による反習近平派の粛清に利用されていたが、その粛清の範囲が党外にまで広がる、ということになる。

 おそらく、習近平の独裁化とこの新たな監察機関に関する修正案を見て、地方のヒラ官僚や国有企業社員に至るまで一斉に移民の検討を始めたのだろう。新華社が憲法修正案を発表して後、インターネットの中国検索サーチエンジンのランキングで「移民」関連検索が一気に跳ね上がった。まもなく「移民」という言葉自体が、検索NGワードになってしまった。このほか、「袁世凱」「皇帝万歳」「戊戌の変法」など、皇帝や革命、独裁を連想させる言葉が次々とNGワードになった。

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