こんなわけなので、南シナ海の緊張はまだまだ高まっていくだろう。

 これは日本にとってまったくもって人ごとではない。まず南シナ海は東シナ海に続いている。中国は外洋への二つの出口となるこの海を囲い込む第一列島線が対米国防ラインと戦略的に位置付けている。中国にとっては南シナ海だけでも、東シナ海だけでもダメで両方ほぼ同時に制空・制海権を強めていかねばならない。南シナ海の緊張は必ず、東シナ海の緊張、尖閣諸島をめぐる緊張につながる。南シナ海の島嶼に日本の主権は絡まないので無関心でおれば、気が付いた時に尖閣諸島が中国の武装漁民に占拠されていた、なんて事態もあり得るわけだ。

 もう一つは、すでに新たな安保法制下では、要請されれば南シナ海での対中哨戒に、自衛隊が派遣される可能性が強いということだ。それどころか、南シナ海有事が万一起これば、自衛隊が中国と直接対峙する可能性はあるだろう。だから、安保法制は反対すべきであった、というのではない。中国のような国と利害が対立する時は、国防力を含めた国力を背景にしなければ対等に話し合いすらできない。断固守る姿勢を見せねば一方的に侵される、そういう相手である。

高まる緊張に対する事実認識と覚悟と忍耐を

 日本人に今必要なのは、現実認識と覚悟である。

 中国が南シナ海の実効支配をここまで強化していること、それはいずれ東シナ海に波及してくるということ。それがオバマ政権の弱腰が招いた結果であり、中国は「話せば分かる」相手ではないこと。譲歩すれば舐められ、強硬姿勢を見せれば、それを口実にさらに強硬な手段に出る。実に厄介で恐れを知らない国なのだ。

 そういう国と隣り合わせにあり、領土も脅かされているという現実を日本人はあまり深く理解していない。

 そして、そういう国と対等に付き合うには、時に取っ組み合う覚悟も必要だ。向こうが片手に棍棒を持ってくるのであれば、こちらだって素手では話にならない。自分の身の丈に合った棍棒は必要なのである。ただし、その棍棒を絶対振り下ろさない忍耐も必要だ。今の多くの日本人は、現実認識も覚悟も忍耐もなく、何も考えていない状況だが、おそらくは、それが一番、有事の可能性を高めている。

新刊!東アジアの若者デモ、その深層に迫る
SEALDsと東アジア若者デモってなんだ!

日本が安保法制の是非に揺れた2015年秋、注目を集めた学生デモ団体「SEALDs」。巨大な中国共産党権力と闘い、成果をあげた台湾の「ひまわり革命」。“植民地化”に異議を唱える香港の「雨傘革命」――。東アジアの若者たちが繰り広げたデモを現地取材、その深層に迫り、構造問題を浮き彫りにする。イースト新書/2016年2月10日発売。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。