日本のマイナス金利の中国経済に対する影響はそんなに大きくない、という見立てもあるのだが、最近の中国はどうも安倍政権のやることなすこと中国に敵意があるとみなしがちである。だが、中国としては、外国投機筋から人民元を守るべく為替介入していくつもりであり、そのために、SDR加入の延期も辞さない覚悟も見せている。

ソロスの空売り攻勢か?

 チャイナデイリー(2月1日付)の「貨幣戦争?人民元が勝つ!」というタイトルの商務部国際貿易経済合作研究院研究員・梅新育の論文も話題を呼んだ。

 「2016年、ソロスは“貨幣戦争”発動を宣言し、人民元を含むアジア貨幣に空売りを仕掛けた。…ソロスの人民元に対する挑戦は成功不可能だ。2015年から人民元は対米ドル貨幣価値が下落し、中国経済の成長率は減速、株式市場は不安定だ。だが、グローバル経済総体があまりよくない状況で、中国は依然良好なファンダメンタルズを維持している。…確かに2015年中から、人民元の小幅な下落は続いているが、20年来、米ドル為替率は安定を維持し、むしろ上昇の趨勢にあった。

 大幅な人民元上昇の後、(現状のように)適度に切り下がるのは自然なことだ。中国は世界第二の経済体であり、人民元は永遠にドルにペッグされることは不可能でもある。

 国際社会での資本の流動性は非常に高く、この状況下で、中国が貨幣政策の独立性を維持したいと考えれば、人民元は正常な変動が望まれる。投資家たちは早晩、状況の趨勢が分かるようになり、この数か月前からの人民元の不安定さを再演することはないだろう。これは投資家たちの過剰な反応なのだ。…

 長期的に見れば、ドルは新興国通貨に対する強硬姿勢を維持していくだろうが、人民元は別である。目下、中国の貿易黒字は続いており、これからも継続していく。米国経済はすでに深みにはまっている。経済成長と異なる産業の盛衰には因果関係があり、同時に実体経済の基礎計画の一部である再工業化戦略を地固めするのは、かなり難しい。

 米国経済が回復したとしても、その貨物貿易状況は悪化しているだろう。…60年代以来、何度かドル危機は起きたが、悪化し続ける貿易状況と経常収支状況と財政赤字がドルの自信を打ち砕いてきた。最近のドルの人民元に対する強気の姿勢は、最終的には“トリフィンのジレンマ”に陥るだろう。

 ソロスのアジア貨幣戦争勃発を別の角度から見れば、中国にとっては一つのチャンスだ。つまり、中国とその他アジア各国の金融・財政領域および、中国が発起した“一帯一路”戦略の協力を進化させる契機となる。…中国とその他アジア新興経済体との金融領域の協力、協調はさらに強化されることだろう」

 「トリフィンのジレンマ」とはエール大学のロバート・トリフィン教授が1961年に唱えた説で、「米ドルが国際的な準備通貨であるためには、諸外国がドルの外貨準備を保有できるよう、米国は余剰流動性を供給しなければならない。このため、米国は経常赤字を容認しなければならないが、これは米ドルの信認を揺らがせかねない。だが、米国が米ドルの信認を保つために経常収支を均衡させてしまうと、国際市場へのドルの流動性供給が滞り、結果的に米ドルが準備通貨の役割を果たせなくなってしまう」というブレトンウッズ体制の抱える矛盾を指摘している。

 梅新育の論はドルの国際通貨時代の終焉に代わり、人民元が「一帯一路」戦略を通じて国際通貨にのし上がるという、中国の野望を表現したものだといえる。