中国で最近の経済系ホットワードは「貨幣戦争」ではないだろうか。中国人民銀行総裁の周小川が外貨準備高を“弾薬”にして、人民元の空売り攻勢を仕掛けようとする外国投機筋を迎え撃つ姿勢を示したため、2月15日には人民元はここ10年余りで最大の上昇幅を記録したとか。2月以降の中国メディアの記事も「貨幣戦争」というワードが散見され、金融政策の“軍事化”というか、妙に勇ましい論調が多い。確かに軍事と金融こそが、国家の具体的“力”であり、その力を外国と争うという意味で、これは戦いだ。では、中国の敵は誰なのか、勝者は誰になるのだろうか。

欧米主要金融勢力集団の陰謀?

 中国で「貨幣戦争」と言えば、2006年からベストセラーになった宋鴻浜の著書シリーズを思い出す。日本でも翻訳されているので、ご存知の方も多いだろう。彼は、米国のリーマンショックなどの予想を的中させ、米ビジネスウィーク誌が選ぶ中国で最も影響力のある40人(2009年)の一人にも選ばれた。

 彼の描く「貨幣戦争」とは、有り体に言ってしまえば、欧米国際金融陰謀論だ。中国にとっての敵は欧米主要金融勢力集団となる。彼の著書『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』(武田ランダムハウスジャパン)では、彼らが将来的に中国に攻撃を仕掛ける手法についても予測していた。

 国家の辺境は陸の境、海の境、空(宇宙)の境のほかに金融の境があり、いずれの境の防衛も大事だが、中でも金融の境を攻撃され崩されれば、政権は必ず倒れる。清の滅亡は、英国金融資本の攻撃によって、中国の銀本位制が崩されたからだ、という。領土領空を守るように、金融の国境を守れなければ、いかに富国強兵をやろうとも工業が盛んになろうとも、国家は亡びるのだ。

 そして、宋鴻浜の予言通り、いよいよ今年、通貨戦争の狼煙が上がった、ということになる。