北朝鮮側はこのことをよく承知しており、核兵器の完成を急いでいる。習近平の軍制改革が完了し、金正恩と非常に相性の悪い習近平政権が北部戦区を掌握すれば、北朝鮮としては、かなり厄介なことになるわけだ。

「単独制裁」で支配強化、「漁夫の利」は渡さない

 一方、習近平としては、困難を極めるとみられている軍制改革を無事終わらせるまでは、北朝鮮の挑発にいちいち乗って、注意力を分散しているわけにはいかない。とりあえずは北朝鮮を孤立させ、各国に北朝鮮の悪辣ぶりを印象づけ、国際社会の中国に頼る気持ちを掻き立てるだけでいい。こうした見方は、たとえば、華字ネットニュース多維新聞などの報道にも垣間見えている。

 著名国際政治学者の時殷弘は、中国が国連の制裁決議案に同調しないのは、「単独制裁」の柔軟性を保つためだと見ている。国連の号令に合わせて制裁を始めたり止めたりするのは、中国としては独自の北朝鮮に対する支配力を損なうことになる。あくまで中国が願うのは、中国の北朝鮮に対する支配力強化なのだ。だから時殷弘は、中国が北朝鮮に対する制裁を急激にエスカレートさせる可能性はあると見ている。

 中国は「協議のみが問題解決の唯一の道筋」「このどさくさに紛れて漁夫の利を得るな」などと神妙な発言を繰り返しているが、だいたい口で言うのと腹で思うのが逆であるのが外交的発言である。その本音では、一番「漁夫の利」を得る計算をしているのは中国かもしれない。

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